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「また一件、妙なのが見つかったよ」

あの後、宜野座の逆探知も失敗したことから一度総合分析室に全員が集まることになった。
そこで唐之杜が探し当てた新たな幽霊アバターがいた

「メランコリア・レイニーブルー、82歳の爺さんのモノだったけれど…。
聞けば孫に頼みこまれて名義だけ貸してたみたい。
んで、この孫が実は半年前に事故死してるんだって」

画面に写るのは学ランを着た
いかにも普通の少年

「時任雄一君14歳。
ところが彼のメランコリアは彼の死後も活動を続けてる。祖父はソーシャルネットのアクセス方法すら分からずアフィリエイトの入金も年金と勘違いしていた有様だった」

「レイニーブルーも凄く大手です。」
「増える増える幽霊アバター」
『縢くん不謹慎です』

朱の言葉におどけて口を挟む縢
亡くなっている方にその態度は失礼だと名奈が縢をたしなめる

「別々のアバターを同時に幾つも操るなんて可能なのか?」
「ヘビーユーザーなら珍しい事じゃないわよね?」

宜野座から飛んできた疑問を唐之杜はメンバーの中で一番ネットに詳しい朱に流す。すると宜野座も朱を見る

そんな二人の視線を受けとめながら朱は力強く頷く。

「むしろ異常なのはこの犯人の演技力です。乗っ取られたアバター、どれも怪しまれるどころか反って本物だった頃よりも人気者になってるんですよ」

普通ならば他人のアバターを完璧に模倣する事は不可能のはずなのにこの犯人は易々とやってのける。

ましてそれが一体ではなく二体三体となってくると話はややこしくなるばかりで…

「何千人何万人というユーザーが何故偽物に気付かない?」

皆が同じ疑問に頭を悩ませる





「本物も偽物もないからさ」

そんな中狡噛の声が皆の思考のループを断ち切る。
一斉に彼の方に向く視線を確信した表情で受けとめる狡噛

「こいつらはネットのアイドル偶像だ。」

偶像とはいわゆる盲目的信仰の対象。
つまり誰かに何かとして視られない限りなり得ないものもの

「葉山も菅原も自分の力だけで地位を築いたわけじゃない。
周囲のファンの幻想によって祭り上げられることによりタリスマンやスプーキーブーギーになることができた」

『アイドルの本音や正体とそのキャラクターとしての理想像とはイコールじゃないってことですか?』
「そうだ」

皆から愛される理想像を理解しているのが本人かファンかなど一目瞭然である
キャラクターは周囲の反応を伺いながらより良しとするものを作り上げる。

故に求めていた側の人間が演じる側に回っても自分が求めていたものを演じるだけなのだから何ら問題はないのである

「犯人はこいつらのファンだと?」

「メランコリア、タリスマン、スプーキーブーギー…
この三つキャラクターを完全に熟知し模倣する事ができた、
それだけ熱を込めてファン活動をしていた奴が本星だ」

三つのキャラクターを眺めながら強い、そしてハッキリとした口調でいいきる狡噛の声が部屋の中に光を差した気がした


(チェックメイトまであと一歩)

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