code 13
フロアに帰ってくるなり狡噛と名奈は唐之杜から借りていたスプーキーブーギーのログの調査を始めた
「"ふーん、なんだか面白そう。ちょっと協力してあげようか?
公安局の幹部候補に恩を売っておくのも悪くないじゃない"」
『これが普段のスプーキーブーギー』
「そうだ、それでこっちが…」
そう言って狡噛は今朝のスプーキーブーギーの映像をながし始める。
「"ごめんですんだら警察はいらないんじゃない。
はぁー、本当に警察なんかと手を組むんじゃなかった"」
戯れた感じの雰囲気から一変、瞳は鋭く尖り声のトーンも大きく下がっていた
あの後随分とファンから叩かれたのだから、怒っていて当たり前の筈なのに名奈は何処か違和感が拭えなかった
「どう思う?」
『どうと言われても、ただ何か違う気がするって感じしか…』
「……」
『何か分かったんですか?』
「あぁ、推測の域を出ないが…
もしあっていればお前の言う違和感も頷ける。
名奈、常守監視官を呼んできてくれ」
『わかりました』
朱の同席を求めるという事に名奈は何となく事情を察してしまった。
自分の感覚に狂いが無いという事は非常に良い事だが、こんな結果を導く為に役立つとはなんとも皮肉な話だと思った
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「こいつだ」
狡噛の一言に朱も征陸も怪訝な顔をする。
「言葉遣いが違う。最初は公安局、次は警察」
「偶然じゃないですか?」
「じゃあ手に入る限りの過去ログを洗ってみよう」
そう言って狡噛はキーボードで公安局という言葉を打ち込む
するとそれを認識したパソコンは次々と公安局という言葉をピックアップしていく。
しかし、どこまでも続くかと思われたそれもあるところで途絶える。
『この日ですね、言葉遣いが変わったの』
それは名奈達がエグゾゼに潜入した後
そしてスプーキーブーギーは今までにほとんど警察という言葉を使ったことがない。
つまりそれが顕す事は一つであって…
名奈が思い至った事に朱も辿り着いたのか彼女の顔色が徐々に曇っていく。
信じたくないのだろう
もしそうであれば自分達はとんでもないことをしでかしてしまった事になるのだから。
「今俺達が追っているのは他人のアバターを乗っ取って成りすます殺人犯だ」
「……」
狡噛の言葉が決定打とでもいうように突き刺さってくる
重苦しい空気にフロアにいる全員が口を閉じて画面上のスプーキーブーギーを見つめる
今回も自分達は犯人の掌で踊らせれていたのだと理解せざるえない状況に、名奈は思わず拳を握りしめた
(揺れる瞳、揺れる心)
(それでも泣くことは許されない)
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