code 29



バチッ


その音と共に体に凄まじい衝撃がはしる。
咄嗟にドミネーターを抜いて盾に使ったから気絶は免れた。

しかし体は痺れている。
ヒリヒリした感覚が手足を駆け巡り微かに体を痙攣させる。
感電までは防げなかった。


「あら、避けられるとは思わなかった」
『ご生憎様、これでも刑事なんで』

名奈がドミネーターを王陵に向けると形状が変わる。



=犯罪係数472
執行モードリースル・エリミネーター。 慎重に標準を定め対象を排除して下さい=



"犯罪係数472"



名奈は思わず眉を顰める。

(一体どれだけの人を殺したの?)

この歳で472を叩き出すなど余程の事をしないと無理な筈。
その為にはそれなりの下準備とサポートが必要である。

しかしそれら全てを一介の女子高生が賄いきれる筈がなかった。


色々な疑問が頭を過ぎりは消えて行く。
女子高生を撃つなど気が引けるが、だからといって見逃すことは出来なかった。


お互いが相手に武器を向けたまま膠着状態が続いていく。

するとどうやら此方が動けない事に気付いたのだろう、王陵が一歩足を踏み出す。
こちらも退がろうとするが依然足は動かない。

嫌な汗が背中を伝う。
完全に空気が劣勢なりかけたその時…


ガラッ!!


美術室のドアがいきなり開く

視界に入ってきた存在に思わず息を呑む。

(どうしてここに居るの?)

彼はこの件に関しては宿舎で待機のはず。


「王陵璃華子だな?」
「それが何か?」

そこには二人を見据える狡噛が立っていた。

『狡噛さん…』

思わず彼の名を呟く。
すると狡噛は名奈を一瞥する

「大丈夫か?」
『…はい』

微かに震える声を抑える。
しかし名奈は内心無駄な努力だろうと思った。

鋭い彼の事だ、自分がどれだけ怯えていたかなど一目瞭然なはず。
それでも今この状況で顕著な態度は取りたくなかった。


そうして王陵璃華子に視線を戻すと狡噛も彼女にドミネーターを向ける。
一気に形成が逆転したのを感じた王陵は歯軋りをすると走り出す。

『待ちなさい!』

思わず追い掛けようとするが
途端足から崩れ落ちる感覚に全身が見舞わた。

足に力を込めて立とうとするが下半身が鉛のように重い。

(上手く立てない…!)

「大丈夫、名奈ちゃん!」

朱が心配げに駆け寄ってくる。
王陵は狡噛が追って行っていた
ほっとして気が抜けた途端意識が朦朧としてきた。


宜野座が慌てて美術室に入ってくる。
その姿を見届けた名奈はそのまま迫り来る大きな波の様な感覚に意識を手渡した。






(心拍数は上昇中)

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