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「そんな訳でうちの可愛い鑑識ドローンが頑張った結果、葉山さん家の排水口からはめでたく遺体の断片が見つかりました。はい、拍手」

唐之杜がそう促すが誰一人として拍手をしようとはしない
正直この状況で拍手をする程自分の肝は座ってない

「なのに誰かがネット上で葉山のコミュフィールドを運営し、
葉山のアバターでうろつき回っていると」
「正解。」
つまり今のタリスマンは幽霊状態、これでは完全に怪談話である。

『誰かがなり代わっている可能性はないんでしょうか?』
「いいトコ突くじゃない名奈。
ただ、どうだかね。葉山は失踪する以前からふざけ半分に偽装IPを使ってたみたいだから」
『そうですか…』

その可能性まで否定されると一体何がどうなってるのか分からなくなる。

宜野座がアクセスルートの追跡を提案しているがどうやら難しいらしい。唐之杜曰くおそらく容疑者は逆探知対策を講じているとのこと
下手に動いて向こうに勘付かれるのは避けたい。

しかしコレは同時にチャンスなのだ。

「ある意味今回の容疑者は逃げも隠れもせずに目の前をほっつき歩いてるわけだ。」
「上手く誘導すれば正体を掴む為のボロを出すかもしれない」
「よし、奴のアバターに接触してみよう」

征陸と狡噛の意見に珍しく素直に賛成をした宜野座だが、早速問題が発生する
「手としちゃ悪くないが誰がやる?」

征陸の言葉に一通り全員を見回した宜野座はやがて口を開く。





『何で宜野座さんコインなんだろう?』

朱のアバター、レモネードキャンディは彼女らしい可愛らしいキャラクターだ。
が、しかし何故か宜野座は十セントコインのアバターである

もう少し他の選択肢は無かったのだろうか疑問に思う

「さぁ? でもあの堅物っぽい所は本人らしくていいんじゃない?」
『! ははっ…そうですね』
思わぬ所から返ってくる答えに驚く。
まさか聞かれているとは思わなかった

そっと唐之杜を盗み見る。
しばらくすると緩く振り返りこちらを見る。オマケにウィンク付きだ。

その艶やかさに思わず頬を染める。どうしてこの人は何をやっても似合うのだろうか。

そんな事を考えながら下を向いていると狡噛から声がかかる。

「いいのか?消えてるぞ常守監視官」
 「あら、ほんとだわ」

確かに画面からはレモーネードキャンディの姿は消えており
十セントコインの宜野座しか残って居ない。

おそらくこの現象は…
『多分チャットルームに招かれたんだと思います。此方から朱ちゃんに接触は暫く出来そうにないですよ』
「名奈、あんた詳しいのね」
『昔ちょっとだけやってたんで』

ネットは繋がっていたからそこから少し弄くってコミュフィールドを経営する事は何ら難しくなかった。
バレた時はパソコンごと処理されたが

『宜野座さん、取り敢えず戻って来ませんか? そこにいてもどうしようもないと思いますし』
「そうだな、唐之杜頼む」
「はいはい。」

暫くして宜野座がスプーキーブーギーのコミュフィールドから戻ってくる。

『お疲れ様です、宜野座さん。どうでしたか?』
「あぁ、中々に興味深かった」
『え…?』


(始まる犯人との攻防戦)
(プレリュードは始まった)


【プレリュード】
前奏曲を意味する言葉です

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