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「お、そっちのかわい子ちゃんが噂の新入りさんすか宜野さん?」

予想通りの可愛い子だったので嬉しいのか縢は鼻の下を伸ばす
そんな縢の存在を宜野座は完全に無視し朱の紹介をする

「常守朱監視官だ。今日から貴様らにとって二人目の飼い主になる」
「よ、よろしくお願いします」

そんな彼女の態度を執行官達は何を言うでもなく見つめる

「全員対象のデータには目を通してあるな。今から袋のネズミを更にしめつぶす
二手に分かれて順繰りに行く」

そう言っては執行官のメンバーを一通り見渡した後、組み合わせを言い渡す
「六合塚と縢は俺とこい。残りの三人は……常守監視官に同伴しろ」
そう言われてほっとした名奈は狡噛に声をかける

「良かった、狡噛さんと一緒なら何かあった時も安心してられます」
するとその発言を聞いた狡噛は複雑な顔をする

「大丈夫なのか?」
「はい、エリアストレスもそこまで高いわけじゃないんで対象に直に触れなければ平気です」
「そうか…」

狡噛はいまいち納得していないような顔で名奈を見つめる

長々と見つめられ流石に名奈ももどかしくなってきてしまう
もう一度平気だということを伝えようとすると…

「えーじゃあせめて名奈ちゃんと一緒にして下さいよ」
後ろで自分が呼ばれている事に気付く。
まさか名指しされるとは思っていなかった。

縢が組み合わせに駄々をこねているようだが宜野座はそんな事は気にせずドミネーターを抜き出し区画に足を進める
その後ろを六合塚がついて行く

縢も仕方なく諦めたのか「まったねー」と言いながら去っていった。

賑やかな要素であった縢が抜けてしまったせいか、はたまた
テントに残ったメンバーが寡黙なだけか。
理由は定かではないが、確実にテントの中は静かになってしまった

#

詳しい事を何一つ教わらないまま置いてかれた朱が手持ち無沙汰になり焦っている
「えっと、あのどうすれば…」

名奈から見ても宜野座の新人に対するあの態度は酷に見えた

胸の前で手を組み考えに浸っている朱。
取り合えず声をかけようとすると…

「あんたが待機を命令してくれればそれで何の問題もないんだか」

征陸が突然適当な事を言いはじめる。
そんな事を教えてしまえば今の朱を更に混乱させるだけなのに…
(征陸さん、仕事さぼる気だ)

「給料泥棒はやめときな、とっつぁん」
「そうですよ、征陸さん。
常守監視官に間違ったこと教えないで下さい」

征陸を窘めなながら二人はドミネーターを抜く
その様子を呆然として見上げる朱に再度声がかかる

「まぁそう緊張しなさんな、お嬢ちゃん  ドミネーターの扱いは分かるな」
「い、一応研修は…」
「こいつは狙った相手のサイコパスを読み取る銃だ。
相手が潜在犯だった場合のみセーフティが解除される
全部ドミネーターのいいなりになって、撃てと言われた相手を撃ちゃあいい」
そう言いながら征陸もドミネーターを抜く

「撃てばいいって…」

その様子見ていた名奈は朱に声をかける
「大丈夫ですよ、何にも心配する事はないですから」

気楽にいきましょう、そう言うと少しほっとしたのか朱もそっと笑う。
和やかになった雰囲気にこれなら大丈夫かもと思いかけたがその空気も一瞬で壊される

狡噛が一人で区画の方に足を進め始めたのだ。
征陸と名奈からしてみればいつも通りの事だが初めての任務でいきなりの指揮。
狡噛のいきなりの行動に焦っている様だ。

「ブリーフィングは、段取りの打ち合わせとかしないんでしょうか…」
戸惑いながら声をかけてくる朱に狡噛は振り返り返事をする

「俺たちが獲物を狩りあんたがそれを見届ける。それだけのことだ」
「いや、もうちょっと具体的に…」

今だに腑に落ちない顔をする朱に狡噛は更に追い討ちをかけるような言葉を放つ

「俺達には俺達の流儀がある
だが、その責任を負うのは監視官であるあんただ。
だから俺のやり口が気に入らない時はそいつで俺を撃て」
「な…」
「俺達も対象と同じ潜在犯だ。
ドミネーターは作動する」

唐突な発言に朱は固まる。そんな朱を一瞥した狡噛は今度こそ本当に区画にに入っていく

その後ろ姿を朱は無言で見つめる。すると…
「気にしないで下さいね、狡噛さんっていつもあんな感じですから。」
「え、あのそれってどういう…」
「常守監視官のこと嫌ってるとかそう言う訳じゃないですから」
横からそう言ってきた名奈は小走りに狡噛の後を追いかける

「あぁ、紹介が遅れたな
あの唐変木は狡噛慎也、隣を歩いているちっこいのは雨宮名奈、んでもって俺は征陸智己
よろしく頼むよ、お嬢さん」
「は、はぁ…」
「さって、じゃあ行くかね」


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