「お帰り、ルーシィ」

オレの声から、間髪いれず。

「この、不法侵入ーーー!!」

声と同時に飛んできた物を、ひょいと余裕でかわす。

ぼすん、と壁にぶつかって落ちたソレ。



「あぶねーなぁ」

「何で避けるのよっ!」

「何でって」



カバンなんて、ぶつかったところで痛くはないが。

避けられる物を、わざわざぶつかる意味が分からない。



「ルーシィはわざとぶつかるのか?」

変な奴だな、と返せば。



「むかつくーーーーっ!!」

「う、わっ!!」



ぷぷーん、と飛んできた凶器第二弾。

ぷるぷる震えるその姿は可愛いかもしれないが。

その鼻?は、さすがに刺さると痛いだろっ。

でも、カバンと違ってソレはナマモノ?だから。

さすがに避けて壁にぶつける訳にはいかない。

とりあえず、片手でキャッチ。



恐怖でぷるぷるしながら、オレを見上げるプルー。

(いや、いつもぷるぷるしてるか?)

にかっ、と笑って抱き締めた。



―…やれやれ。お前のご主人様は短気だな。



ってか。

「お前、星霊投げるなよ。可哀相だろ」

「うわー、アンタに正論言われるとムカつくわー!」

バンッ!と勢いよくドアを閉めてどかどかと部屋へ入ってくるルーシィ。



やっぱり今日も、ご機嫌ナナメ。



「…おかしいなぁ」

どうしても、うまくいかない。



「あぁ!?なにが!」

慌てて手で口を押さえるものの。

ルーシィの表情を見れば、手遅れなのは確実で。

あちゃー、と思いながら、視線を逸らす。



「な、に、が!?」

目前に迫ったルーシィから、どす黒い気配が。

まったくもって。

何でこうも予定通りにはいかないのか。

上手くいかない苛立ちで、がしがしと頭を掻いた。



―…本人に言っちゃ、意味がないと思うんだけどなぁ。



言わなきゃ、ルーシィの怒りは解けそうに無いから。

覚悟を決めてルーシィへと視線を戻した。

じろりと睨みつけられる視線が痛い。



「ロキが、な」

「ロキ?」

「そう」

「ロキがどうしたのよ」

「…あ〜〜〜っ!!」

言うのか言っていいのかオレ!



「ナ、ツ?」

目が笑ってません、ルーシィさん。



「だっ、だからロキが」

「ロキが何よっ」

「ギルドで…っ!」



少し前のことだ。

ギルドで、ロキが相変わらずいちゃいちゃしてて。

その隣にいる女がにこにこ(べたべた?)していて。

そういや、いつも傍にいる女達は笑ってるな、って不思議に思って。

その会話を何気なく聞いてたら。

(オレは悪くない。大声でしゃべってる方が悪いと思うぞ!)



「ロキったら突然部屋にいるんだもん。驚いちゃった」

「そう?でも、僕がお帰りって出迎えるのは、嬉しくないかい?」

「うふふ。どうかしら?」

「またそんな事言って。抱き締められて嬉しかっただろ?」

「そうね。思わず疲れも吹っ飛んじゃったぐらい」

「ね?僕はいつでも君を癒す存在でありたいんだ」

「ロキったら、またそんな上手いこと言って」

「もちろん、その後も君を一晩中、全身全霊を懸けて癒してあげるよ」

「もうっ、ロキったら」



…なんて、会話していたのだ。



「だから、なに?」

さっきより明らかに機嫌が悪くなったルーシィ。

眉がぴくぴく痙攣してるのは気のせいか?



「いや、…だから」

「あーもうっ!はっきりしなさいっ!」



バンッ!とテーブルを叩くルーシィ。

上手く言葉が伝わらないもどかしさをどう表現したらいいのか。

オレは言葉で表現するのは、苦手だ。

はっきり言って、無理。



ならば。



「きゃっ」

引き寄せると、ぽすん、と簡単に胸に飛び込んできたルーシィ。

「ちょ…っ、ちょっと、ナツ!?」

一瞬の間を置いてじたばたと暴れだすルーシィを。

きゅっと、両腕で抱き締めて。

「暴れんなよ」

耳元で告げる、が。

「は、な、し、てーっ!」

…聞いてねぇし。



「ルーシィ」

「いい加減、離してってば!」

「ルーシィ!!」

さすがに驚いたのか。

びくっ、と身を震わせて動きが止まる。



―…あぁ。どうしても上手くいかない。



「ごめん」

驚かすつもりなんか、これっぽっちもないのに。

うまく伝えられない自分に、腹が立つ。



「なぁ、ルーシィ」

「…なに」

「お前、無理してねぇか?」

ぴくり、と小さく体が揺れた。

「なによ、突然…」

ぎゅっと、少しだけ強くルーシィを抱き締める。

上手く伝わるようにと願いを込めて。



「ルーシィ、いつも笑ってっからさ」



ギルドでも、仕事先でも、他愛の無い会話の中でも。

からからと明るい声で元気に。

心底、楽しそうに。



「本当に楽しいなら、それでいいんだ。でも、オレは」



自分のせいでギルドが壊されたんだと立ち竦んで。

それでもここにいたいと泣いたルーシィ。

ボロボロと泣き続けるその姿を見て。

それまで、いつも元気に笑っていたルーシィが。

ずっと胸の中に抱えていたものがある事に、初めて気付いて。



「もう後悔したくないから」

一番近くにいたのに。

何も分からなかった、非力な自分。

そんな自分にはもうならない。



「オレは、ルーシィを癒したいんだ」



「…あんた、ソレ意味分かって言ってんの?」

ルーシィが呆れたような表情でオレを見上げる。

オレはその綺麗な琥珀の目を見ながら。

「おうっ!」

力を込めて、にかっと、笑った。





※そんな君が大切だから※





「なぁ、ルーシィ」

「な、なによっ」

「癒されたか?」

「…は?何でコレで癒される訳!?」

「何でって」



だってロキの話では。

部屋にこっそり忍び込んで。

帰ってきた時に「お帰り」って出迎えて。

抱き締めて癒される、って。



…あれ。何か忘れてる。



「おぉ!!…あ?」

思い出した。けど。



「ルーシィ、一晩中、全身全霊を懸けて癒すって、どうしたらいいんだ?」

分からねぇものは、聞くしかない。



途端。

ぼんっ、と真っ赤になったルーシィが。



「ナツのバカーーーーーっ!!」

「ぐえっ」



飛んできたのは、見事なまでのヘッドロック。

油断していたオレは、綺麗に食らって。

床の上へとひっくり返った。



―…おかしいなぁ。



見慣れた天井を見上げて。

ひとり、首を捻るばかりだった。


***
Guroriosa:碧っち。様よりサイト開設1ヶ月記念&5000hit記念に頂戴致しました。
サイト開設1ヵ月、もう過ぎてしまいましたが、おめでとうございます!
性懲りもなく、頂いてみました。
るんるんですw
ルーシィを癒そうとするナツが可愛い.
そして、ロキの真似するができないナツ.
かわういよぅ可愛いよー
君がロキの真似なんて到底無理な話なんだよ.
落とし方はそれぞれ違う.
これぞルーシィ総受け愛(意味がわからない;

碧っち。様、寛大な御心で頂くことをお許し下さり、ありがとうございます!
15000hit本当におめでとうございます!
もうすぐ20000hitですね^^*
益々のご盛況お祈り申し上げます.
ありがとうございました!


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