暗闇の中、月明かりだけが神秘的な輝きを放つ。
月夜に照らされて、たどたどしく足を引き摺る少女。
その隣を歩くのは青い仔猫。
「ルーシィ、大丈夫?」
「平気よ、ちょっと捻っただけ」
心配そうに見上げてくる仔猫にくすり、と笑みを零して。
痛みを放つ足首の熱に耐えた。
そんなことよりも気を滅入らせるのは、先程見かけたあの光景。
「失敗しちゃったなー…まさか、ロキも探してるなんて」
願いを叶える星の輝き。
数日前に、桜色の少年の破壊行動によって欠けて飛び散ってしまったこの星の欠片。
それは多くの者を魅了してしまう禁断の果実のような存在。
破壊した張本人、ナツに頼まれて探すのを手伝うことになったまでは良いけれど。
その先で見かけたロキの姿。
幼馴染で、兄のようで、先輩で…―――大切な人。
渦巻く混乱に耐えるように瞳を閉じる。
「ルーシィ?」
不意に掛けられた声に反応するように顔を上げて息を呑んだ。
そこには、先程見かけたロキの姿。
「どうしたの?こんな時間に」
「ロ、キ…こそ、なんで」
揺れる瞳からは微かに涙が溢れて。
(なんで―――あなたも探してるの?)
声にならない問いかけを繰り返す。
「ルーシィの帰りが遅いから探しに来たんだよ」
ふにゃり、と笑いながら触れる手は優しくて。
変わった猫だね、なんて微笑む姿は先程とはまるで別人で。
戸惑う心を打ち消すように疑問を投げかけた。
「うそ、よ…だって私さっき見たもの、ロキのこと」
「…それは、変だね。僕は今さっき外に出たばかりだよ?」
微塵も変わらない笑顔のままそう言ってのけるロキ。
にゃぁ、と小さく鳴いたハッピーを抱き上げて。
泣きそうな顔を隠した。
(なんで…なんでよ。ロキのこと、わからないわけないのに)
「とにかく、話は後にしよう?足、怪我してるだろ」
「いらない」
優しく差し出された手を払って。
足の痛みなんて気にせず走り出す。
「ロキの嘘つき…っ!」
耐え切れず零れ落ちた涙に混ぜて。
小さく言い放たれた一言に思わず息が止まった。
ひょこひょこと不自然な動きを見送って。
溜め込んだ息を吐き出す。「…―――そこに、いるんだろ」
ルーシィへ向けた甘い声よりもずっと低い声で。
冷たさすら含むその声に応えたのは、カプリコ。
「ルーシィ様に見られたようですね」
「そうだね、困ったな」
わかってたんだろ、なんて肩を竦めて。
ふにゃり、と笑いながら一言。
「まぁ…とぼけ続けるけどね」
月夜に隠された星の欠片
fin.
***
・ヒロインとその幼馴染が目的一緒で何故か敵対関係になる設定ってよくある事例そのいち。
・願いが叶う`ナニカ`ってもはやファンタジーの王道だとオモウンダ。
・側で支える2人なり3人の男性に想われるヒロイン、揺れる乙女心は少女誌で在り来たりな事例そのに。
【簡易設定】
・ルーシィとロキは幼馴染。
恋人一歩手前な関係。
高校卒業するまでは手を出さないようにしようと我慢しているロキ氏。
近付く男はゆっくり笑顔で排除している。
・ハッピー
月のうさぎさん的な。使者。
・ナツ
ハッピーに頼まれて`願いを叶える星の輝き`を守ろうとした結果、戦闘になってしまい暴れ過ぎて欠片飛び散る。
そのまま欠片のひとつがルーシィの手元に。
押されるままに欠片探しをする羽目になるルーシィ。
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続きは、ない…んだけど脳内では完結されてて…気が向いたら追々その内書き起こす予定。予定は未定。
でも長編話になるから実行されても大分後だと思われます。
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