手を繋いで、指を絡めて、そうして歩んできた道程は多分、そんなに長くはない。
いつからか触れ合う時間が長くなって。
いつからか交わる吐息も近くなって。
合わせることなんてなくても側にいつも感じていた。
こつん、と額が合わさって想いが通じあったことがつい先日のようで。
相変わらずの態度に少しだけ物足りなさを感じる。
小さく溜息を零せば、反応するように桜色がふわり、と靡いた。

「ルーシィ?」

骨ばった手が優しく金糸を撫でる。
ぎこちなく触れては離れていくその掌の先を眺めればぴたり、と動きが止まった。
真っ直ぐに向けられる視線に息が止まりそうになって。
しん、と静まり返った部屋を意識する程に心臓の音が鳴り響いているような錯覚に陥る。

「…な、な、なに」
「なにどもってんだよ」

眉を顰めて首を傾げる様子に意識しているのは自分だけのような気分になって。
それでも以前とは違う二人きりの空間には未だに慣れない。

(…もう、ハッピーが余計な気を回すから変な空気になるのよ)

緊張で震えた手を隠すように引けば、無造作に覗き込んでくるナツの顔が視界に入って。
だんだんに近付いて。
鼻先が触れそうになって。

「ナ、ナツ?」

思わずじぃ、と眺めているとこつん、と額が重なった。
唸るように押し付けてくる額をそのままに受け止めていると諦めたような溜息が吐き出される。

「目、閉じろよ」
「な、なんで?」

ぱちり、と瞬きひとつ。
示された動作の意図を問えば、盛大な溜息と共に離れていった。
乱れた前髪を整えながらちらり、と横目に見ればむす、と口を尖らせて頭を掻いている。
ゆっくりと一連の行動を思い返して。

近付いた吐息。
混じり合う髪。
触れ合った肌から広がる熱。

かぁ、と頬に熱が宿った。

(…もしかして、キス…しようと、してた?)

火照る頬を両手で押えて、小さく息を吐いて。
心を落ち着けて。

「ナ、ナツ!」

名前を呼んで、ぐい、とその腕を引き寄せればゆらり、と傾く身体。
先ほどのナツと同じようにこつん、と額を合わせればきょとん、と見開いた瞳とぶつかって。

意を決して吐息が交わる先へ…―――

「なんだ?」

進もうとして、冷静な声に意識が引き戻される。
同時に込み上げてきた熱に思わず身体を引いた。
耳の先までじんじんと熱く麻痺して、ナツの顔を見ていられなくて俯く。

(な、何をしようとしたの…今、あたし…)

羞恥に耐えきれなくなりそうで。
瞼が熱くなって。
熱に浮かされたように込み上げてくる涙を隠すように更に下へと顎を引いた。
あ、と小さく零れたその声につられるようにそろり、と顔を上げれば同じように耳まで朱に染めあげたナツ。
数秒間、どちらともなく視線を交わらせて思わず笑みが零れる。
重なった笑い声に混ぜて繋いだ手の先から熱が伝わって。


今はまだこのままでいい。
ゆっくりと繋がっていく気持ちは一緒だから―――。


fin.
***
22222打を踏んで下さった九夜猫さまのカウンターリクエスト『ナツルーで付き合い始めの初々しい感じで、お互いにキスのタイミングを図ってるっぽい内容』です。

大変お待たせ致しました!!
じれったいナツルーなイメージで書いていて、途中からだんだん楽しくなってきちゃって。
じれったいの書くの好きかも、と新しい発見をしましたv
いあ、これが本当にじれったいかと言えばなんとも言い難いですが…(焦)
でも楽しかったです。
素敵なリクエストをありがとうございました!

九夜猫さまのみお持ち帰り可。
22222hit本当にありがとうございました!!


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