昼下がりの街中。
大きな荷物を抱えてギルドへと戻る途中。

「とと…」

ころり、と零れ落ちそうになった林檎を辛うじて戻す。
安堵と共に立ち止れば、ふいに手元が軽くなった。
反射的に頭上を仰げば見慣れた笑顔。

「王子様参上」

持つよ、と聞こえるより先に彼は荷物を手にゆっくりと隣を歩きだした。

「ありがと、ロキ」
「呼んでくれればいいのに」

微かに苦笑したロキに困ったように言葉を返す。

「ロキは荷物持ちじゃないでしょ」

でも、助かったわ、と小さく笑う彼女にロキは心の内に温かなものが広がるのを感じた。

「荷物持ちだなんて感じないよ」

ふにゃりと笑えば微かに頬を染める彼女。

星霊を大切にしている君。
心から僕らを想う君。
そんな君を誰よりも愛おしいと想っている僕。
一人の、女の子として。
だからこそ君には僕を一体の星霊ではなく、一人の男として見て欲しい。

「ロキ?」

大丈夫、と覗き込んでくるルーシィが視界に映って自分が立ち止っていたことに気付いた。

「あぁ、ごめんね?考え事をしていたみたいだ」
「なにか心配事?」

首を傾げながら訊ねてくるルーシィの言葉を曖昧に否定して再び歩を進める。

くるくると変わる表情。
心からの笑顔。
芯の強い意志。

この気持ちを伝えてしまえばどうなるのか。
不安と同時に期待が芽を出す。
そんなことを思考の片隅で考えている内にギルドへと辿り着いてしまった。

「おかえりなさい。ルーシィ、ロキ」

とん、とカウンターに荷物を置けばミラジェーンがにこやかに出迎えてくる。

「手が離せなくて、ごめんね」

助かったわ、と続けながらことん、と珈琲とジュースが差し出されて、ルーシィはいつもの席に座った。
その姿を視認しながらサングラスを整える。

「じゃぁ、僕はこれで…」

膨らむ想いをこれ以上育てたくなくて、それでも君には必要とされていたい。
慣れない感情に振り回されている自身に小さく溜息を吐いて、背を向ければ慌てたように僕を呼ぶ君の声。気付かない振りをしてギルドを出ると、きゅ、と腕の袖が掴まれた。

「ロキ!」

その手に引かれるままに身体を向けると困惑した瞳が揺れる。

「あ、の…」
「ルーシィ?」

俯きながらたどたどしく紡がれる言葉の先を促せば、染まる朱が耳まで広がっていった。

「た、」
「た?」

言葉の意味が掴めずに首を傾げると、勢いよく潤んだ瞳に睨まれる。

「た、助かったからっ!」

そして告げられた後、ぐい、と引き寄せられると共に頬に当たった柔らかな感触。
ちゅ、と微かに鳴ったリップ音。
確かめるように視線を滑らせれば、俯いていてもわかるほどに染まり上がった頬。
緩む口元を押さえながら君の耳元に唇を寄せて、この感情を声に乗せよう…―――。


fin.
***
理由:久遠様へこっそり相互記念でロキルを書かせて頂きました。

お忙しそうなのでリクエストに伺う勇気がでず。
でも嬉しかったのでここでひっそりと叫んでみる。
久遠さまー!大好きですーー!!
相互本当にありがとうございましたーーー!!!

久遠様のみお持ち帰り可。


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