「ロキって口ばかりよね」
信用できない、と言われた君の何気ないその一言が今更ながらに胸に突き刺さった。
大切にしたいのは勿論のこと。
できればこの身体中を支配している君への愛しい気持ちも知ってほしかったんだ。
それは言葉にすることしかできなくて。
他にどう表現すればいいのかわからなかった。
そんなことを考えて立ち尽くしていると、
「ローキ、ひとり?デートしましょうよ」
いつか街中で声をかけたであろう女の子が腕に絡まってくる。
「んー、ごめんね?」
忙しいんだ、と適当に言葉を返してやんわりとその腕を外し、ギルドの端で服を脱いでいるグレイに近付いた。
「グレイ」
「あ?なんだよ」
「僕って口だけかな?」
「はぁ?」
「惜しみない愛を伝えていると思っているんだけど…」
沈んだ声で落ち込むロキ。
グレイは、あぁ、と納得する。
「お前は言い方が嘘くさいんだよ」
「嘘くさいって、」
「いっそ喋んな」
人間同士の表現方法、コミュニケーションの一環を否定されたロキは、それ以上何も言うことができなかった。
喋るな、か。
そうしたら彼女は信じてくれるのだろうか?
「グレイに相談した僕が愚かだったよ」
「喧嘩売ってんのかてめぇ」
それでも話を聞いてくれたことには感謝して、カタン、と席を立つ。
最愛の彼女へ視線を向けると、彼女はいつものようにナツとじゃれあっている。
側に行きたい衝動を抑えながらどうしたらこの気持ちが伝わるかを今一度思い、ギルドを後にした。
そうして愛しい彼女が帰ってくる部屋へと向かう。
どのくらいの時間が経ったのか、気付けば日は沈んでいて。
がちゃり、と扉の開く音がした。
いるはずもないそこにロキがいたことに驚いて、ルーシィは目を丸くする。
「ロキ?」
「ルーシィ、お帰り」
すぐにでも抱きつきたい衝動を抑えながら笑顔で彼女を出迎えて。
その柔らかい肌に触れたい欲望を諫めて。
なるべく、距離を取って接してみる。
ああ、こんなにも彼女だけを求めているのだと現実を突きつけられたような気がした。
まるで拷問のようだと自嘲した笑みを浮かべる。
「ただいま、ロキ」
それでも満面の笑顔でそう言われてしまえばにっこりと笑い返すしかない。
「お腹は空いてない?」
「あ、大丈夫。食べてきたから」
「そう」
「ロキ?どうしたの?」
様子が変だと思ったのか心配そうに手を伸ばしてくるルーシィ。
その腕を絡め取ってキスをひとつ。
好きだから側にいたい。
好きだから嫌われたくない。
だけど側にいられるだけで幸せなのは変わらなくて。
赤く染まっていくその表情がとても愛おしくて。
そのまま動かないルーシィの首元に唇を寄せる。
「ち、ちょっとロキ!?」
いつものように引き剥がそうとしないルーシィ。
続けてもいいってこと?
首筋から耳元へ。
そして額に口付けをして…―――
す、と離れるとルーシィは首元まで真っ赤に染めあげて震えていた。
目元が薄らと潤んでいるようにも見えて。
「怖かった?」
「ち、違っ…」
ふるふる、と首を横に振って必死に否定するルーシィ。
「ろ、ロキが…」
「僕が?」
「い、いつもと違ってみえて…」
「うん?」
「……い、意識しちゃう」
そう言って俯くルーシィは本当に可愛くて。
理性を抑えることがこんなにも困難なのかと神様を恨んだ。
`愛してる`
そう心で呟いてルーシィの唇へ自分のそれを重ねる。
「……ロキ」
「なに?」
「聞こえた…」
「なにが?」
「……ロキのこと、もうちょっと信じてもいいかな」
そうやって、
いつだって僕は目の前の君に溺れていくんだ…―――。
fin.
***
Cait Sith Whisker:歌海ねこ様へ相互記念として書かせて頂きました!
「言葉にしない愛情表現でロキだって口だけじゃないところ」を表そうとしたらもう喋んなになってしまった。
ご飯作って待ってるとか添い寝とか色々試みてみようと思ったのですが!
ロキ感極まっちゃってわふわふしちゃうよ、ってことで黙らせました(汗)
そしたら落ち込んじゃってですね。憂い余って欲情しかけちゃうとかもー(:_;)
ロキはルーシィ大好きなんです。
歌海ねこ様のみお持ち帰り可。
歌海さまー、素敵ロキル絵に対して力不足なロキルお返しになってしまいましたが、これからもよろしくお願い致します!
相互、本当に本当にありがとうございました!!
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