ずっと一緒にいたいか?と聞かれた。
当たり前だ、と答えた。
だったら好きだと伝えてこいと言われた。
好きだといったら逃げられた。
捕まえてこいびとになりたいと行ってこいと言われた。
言われるがままに動いて、その通りに言ったらルーシィは笑ってくれたんだ。
いつも楽しそうに笑うその表情が大好きだ。
けれど、その時のルーシィは泣いてるのか笑ってるのかわからなくて。
ただ、その笑顔がとても綺麗だと思った。
この笑顔を壊したくないと、それだけが真実。
色々と面白がってああだこうだと言っていたギルドの仲間たちにルーシィとうまくいったと報告したら殴られた。
だけど、うまくやれよ、とか喜んでもくれて、それだけで嬉しくなった。

「ナツが付き合うなんてなぁ」
「お前も遂にか」

ワカバやマカオが感慨深そうに言ってくる。

「はぁ?遂にってなんだよ」
「なにいってんだ」
「お前ルーシィちゃんとあんなことやこんなことが、」
「なぁ?」
「そうだなぁ」
「羨ましい限りだぜ」

あんなことってなんだよ、意味わかんねぇ

2人で酒を飲みながらなにやら盛り上がってくねくねしている様に呆れてそう言うと大層面白そうに話し始めた。

「だーから、お前も遂にルーシィちゃんと付き合うことになったんだろ?」
「付き合う?……ああ、そう…なのか?」
「そうだ。てことは、恋人同士ってやつになったわけだ」
「こいびと?」
「おう、この恋人関係ってやつを良好な関係にしていかないとせっかくルーシィちゃんと付き合えたのに、別れちゃうかもしれねぇから気をつけろよ」

こいびと?になったら何かしねぇと別れんのか?

「別れる」という言葉に反応して。

「なにしたらいいんだ?」
「なんでもだよ」
「だけどタイミングってやつも大事だ」
「普段やっていいことも場合によってはやっちゃいけねぇ」
「女ってのは複雑な生き物なのよ」

そうしてわはは、といつものように若いっていいねぇ、なんて昔話を始める。

こいびと?ってなんだ?

そんな2人を無視してううん、と頭を捻っていると。

「なに唸ってるのよ?」

金糸の髪が視界に入る。
大きな瞳に覗かれた。

「オイラ知ってるよ、変なもの食べたんだ。お約束ってやつなんだ」
「本当に失礼な猫よね、あんた」

呆れながらハッピーと会話するルーシィ。

「ルーシィ、」
「なぁに?」
「俺達ってこいびと同士なのか?」
「え?」
「こいびとってなにすんだ?」
「え、と、」

唐突なナツからの問いかけ。


あの告白は…−−−
わかっていて言ったんじゃない?


そんな疑問がルーシィの頭を過った。
そうして思い始めたらそれが真実な気がして。
やっとナツと両想いになったと思ったのに。

「こいびと」ってなんだ?と首をかしげるナツ。
その様子に考えたくないことが溢れ出てきて、急に気分が悪くなってくる。
怪訝そうに眉をしかめるナツがぎょ、と慌て始めた。

「ルーシィ!」
「お前、何泣いてんだよ?」

ハッピーとナツが慌てふためいてルーシィに近付く。

「な、泣いてなんかない!」

今まで自分だけ恋人だと思っていたことが自惚れだったのだと感じて。
それが自分が想像していたよりも哀しかった。
それでもそんなことは怖くて口には出せなくて。
今はナツの顔を見ることができなかった。

「あ、あたし、用事思い出したの!先に帰るね」

それだけをようやく言葉にして、逃げるようにその場を離れる。

「ルーシィ!」

オイラ、ルーシィについていくね、とハッピーが翼でルーシィを追いかけた。
ナツは、ルーシィの悲痛な表情にショックを受けて、その場から動くことができなかった。
ただ、ただなんでだという疑問ばかりが頭を駆け巡って、消えていく…−−−



「ルーシィ!」

早足でギルドを出て、そこから走って帰り道を進んでいくルーシィに追いついたハッピー。
ルーシィの瞳からは涙が止め処なく溢れ出ていた。

「ハッピー、ナツは、わかってないで恋人になれって言ったんだね」

溢れ出る涙を拭いながら小さくそう零すルーシィ。
その様が居た堪れなくて。
確かにナツは、そういう感情に疎いけれど、ルーシィに対する感情は仲間以上であると断言できた。

「ルーシィ…でも、ナツはルーシィのこと本当に大好きなんだよ」
「でも、ナツは異性に対しての好きと仲間に対しての好きに区別なんてないわ」
「そんなことないよ!」
「あるよ、一緒にいたいっていうのは、好きだからじゃないんだよ」
「そんなこと、ないよ」
「だって、さっきのナツは、」
「じゃぁオイラ聞いてくるよ!」
「え?」
「ナツにルーシィのこと聞いてくるから!」

そんなこと絶対にないから、と止める間もなく、ハッピーはギルドへ引き返す。

聞いたってナツは…−−−
わかんないよ
いったいどういうつもりだったのかなんて、怖くて聞きたくない。


沈んだ気持ちで開ける扉はいつもより重く感じて。
ガチャ、と響く音はひどく無機質だった。

「お帰り」

ふわり、と笑顔で出迎えたのは、いるはずもない人物で。

「ろ、ロキ!?」

驚いて一歩下がると、その様子に少しも動じない彼は、にこにこと近付いてきて、ルーシィの手を取って跪いた。

「お風呂にする?ご飯にする?それとも僕にする?」
「え、と、……なんで?」
「うーん…ルーシィが哀しそうだったから?かな」

混乱した頭を整理させながら問う言葉に、ロキは柔らかく笑い返して、優しく部屋に招き入れる。
ロキに連れられるがままに部屋に入り、椅子に座らされた。

「なにかあったんでしょ?」

ロキは、向かいに腰掛けて、お茶を差し出すと、話してごらん、と促す。
保護者のような、温かい気遣いに心が少し和らいで。
先程の出来事を話した。

「なるほどね」
「ずっと、私の勘違いだったのかと思ったらすごく淋しくなって…」
「泣かないで…そうだ、ナツをやめて僕にすればいいよ」

ね、なんて相変わらずにこにこと手を握ってくるロキ。

「ロキ…ありがと」

これがロキなりの励まし方だなんてすぐわかってしまうけれど。
それでも今のルーシィには温かい言葉だった。

「僕は本気だよ?」

ルーシィさえよければだけどね、と甘く囁いて、手の甲に口付けをひとつ。
落ち込んだ気持ちの時にそんなことを言われると縋ってしまいそうになって。
だけど、どんなナツでもやっぱりナツのことが好きなわけで。
どうしたらいいかわからずに頬を赤くして俯く。



バンッ



勢いよく部屋の扉が開かれた。

「ルーシィ!!」
「ナ、ナツ!?」

ガタン、と反射的に椅子から立ち上がり、逃げるように後退りするルーシィ。

「ルーシィ!」

そんなことはお構いなしにずかずかと部屋に入ってルーシィに詰め寄るナツ。

「俺は!付き合うとかよくわかんねぇけどっ」

全力疾走でもしてきたのか、ナツの息が荒い。

「それでも俺は、ルーシィといたいんだ!」

怒っているような鋭い目つきでルーシィの腕を掴む。

「だから!逃げたりすんなよ!別れるとか言うな!!」
「い、痛、…ち、ちょっとナツ!」
「ルーシィ!」
「はい、そこまで」

す、とロキが間に入ってナツを制した。

「ナツ、いきなり女の子に乱暴は良くないよ?」
「だってルーシィ逃げようとすんだろ!」
「な、…に、逃げないわよ!」
「まぁ、とにかく座って。ちゃんと話し合おうね」

ロキは、ふたりに向けてテーブルを指して。
大人しく従ったのを確認してから、

「僕はもう帰るけど、くれぐれもルーシィに、僕のオーナーに乱暴な真似はしないでくれよ、ナツ」

ナツに念を押してその場を離れる。
そして、大丈夫だから、とルーシィに囁いて、彼女がこくん、と頷いたことに笑顔を向けてロキは星霊界へと帰った。

「な、なにしに来たのよ」
「あぁ?だから、別れるとか言うなって」
「言ってないでしょ、そもそも付き合ってないんでしょ」
「なんでだよ」
「なんでって、ナツは、その、付き合うとか…わかんないんでしょ」
「だから聞いてんだろ」
「もー、意味わかんない」

突然やってきて発せられる言葉の数々が理解できなくて、ルーシィは頭が痛くなる。

「なんでだよ、だから…こいびとはちゃんとやらねぇと別れるんだろ?」
「なによそれ」
「違ぇのか?」
「……恋人はちゃんとするものじゃないでしょ」
「なんだ嘘か」
「そういうわけじゃないけど…」

はぁぁ、と深い溜息を吐いて安心するナツ。

「ルーシィ、好きだ…一生一緒にいるぞ」
「な、…あ、ああんたまた意味わかってないで…っ」
「はぁ?意味ってなんだよ」
「だから、…それプロポーズ、」
「プロ?よくわかんねぇけど、ルーシィが嫌だとか離れたいとか言っても俺は嫌だから」
「なによそれ」
「つーか無理。だから、別れるとかねぇから覚えとけ」
「な、なによそれ、強引」
「こいびともよくわかんねぇけど…俺はルーシィと一緒にいたいからいるんだ」

それでいいだろ、と満面の笑顔で言われてしまえばもうそれ以上なにも言うことなんてできない。

「てか腹減った。メシ食いに行こうぜ」

ナツは、ルーシィの返事なんて求めていなくて、話は終わりとばかりに立ち上がる。

「仕方ないなぁ」

結局いつもナツに振り回されてしまう。
それでもナツの言葉に偽りはなくて。
だからこそ安心できるんだと納得した。


これから先もあなたといられることを確信して…―――。


fin.
***
Guroriosa:碧っち。様へ相互記念として書かせて頂きました!

ナツルーリクで、
『付き合い始めて日が浅い2人で、ナツが恋人という関係ってどうしたらいい?と悩んでいて。ナツのそんな姿を見たルーシィは、恋人になった事を後悔していると勘違い。結局はらぶらぶな2人で、途中で喧嘩するとかその他諸々』
ということでしたので、ちょっと…いや大分長くなってしまった上に支離滅裂になった気が…。
そしてリクエストに適っていないような…(´;ω;`)
でもでも、一生懸命頑張ってみましたので、よければ貰ってやって下さい!

碧っち。様のみお持ち帰り可。
相互、本当にありがとうございました!
これからもよろしくお願い致します。


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