魔力の乱れを感じて、微かな胸騒ぎにロキは門を開く。
きらきらと舞い散る粒子に身を包んで、見慣れた景色へ降り立つときょろきょろと周囲を窺っているルーシィを見つけた。
何をしているのか予想も付かなくて、首を傾げながら近づいていくと視界に映る彼女の顔色が青ざめていることに気付く。
まるで何かを警戒しているような動作に眉を顰めて。
ゆっくりと距離を縮めながらここ最近のルーシィの様子を思い返した。
もしかしたら、口に出さないだけで本当は心当たりがあるのかもしれない。
そんなことを思考の端で考えながら手の届く距離で揺れた金糸に目を細める。
怯えるように震えているその姿に小さく唇を噛んで、ロキは意識して軽快な声を出した。
瞬間、弾けたように悲鳴が響いて。
見開いた琥珀色が涙に滲んで揺れる。
ぐらり、と倒れるように傾いた身体を咄嗟に引き寄せて。
抱き締めるように支えると恐怖に染まっていた瞳が少しだけ和らいだ気がした。

「大丈夫?ルーシィ」

縋るように掴んでくる指先。
甘えるように寄せられる金糸。
その一つ一つの動作に応えながらロキは腕の力を強める。
包み込んだ肌はひんやりと冷え切っていて。
長い時間、風に当たっていたことを表していた。

「一緒に帰ろう」
「…ん」

少しだけ赤らんだ頬は涙の後を残して、憂いを帯びた瞳が地へ伏せられる。
それに気付かない振りをして、嗚咽に混じって呼ばれた声を塞いだ。
驚いたように見開かれた琥珀はただ自身だけを映し出していて。
意識されている事実と重なり合う呼吸に嬉しさが込み上がる。

「真っ赤だよ、ルーシィ」
「ま、またからかって!」

噴き出した笑い声とハッとしたようなルーシィの顔。
艶やかな表情に見え隠れする幼さは人間の成長と魅力を醸し出す。
同じ時を生きていたくて、同じ時間を過ごせていない。
それでも、流れる時の一部でも一緒にいられるのなら―――何も迷うことはない。
冷たく震えるルーシィの手をゆっくりと引きながらロキは一歩先を歩いて。
人通りの少ない路地を眺めながら視界の端で動いた陰に足を止めた。

「ロキ?」
「―――…いや、なんでもないよ」

不思議そうに首を傾げたルーシィへ優しく微笑んで。
サングラスを直す振りをしながら再び歩を進める。


***
泣かせないために、守る。

2012.06.09.
ロキの日。


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