本当は、ずっと前から気付いていたんだと思う。
呼び方を変えたその日からずっと、感じていた違和感。
自分が何をすべきか。
初めて諭すように言われたそれは胸の内を渦巻き続けて。
例えそれがわかったところで何かが変わるわけじゃないとどこかでまだ、信じていたのかもしれない。
気付かない振りをし続けてきただけだと思い知らされたのは、彼の周りにはもう別の相手がいるのだと目の当たりにした時。
儚げに揺れていたその瞳が味方ではなく、敵として自分を映した瞬間―――答えは既に出ていたんだ。

「ダメ元でも、やっぱ同じ学校が良かったスわー」
「……すみません」

冗談混じりにそう言って、顔を上げると彼は微かに眉を顰めて。
あまりにも申し訳なさそうな表情をするから思わず釣られて泣きそうになる。
ずっと一緒が無理だってことくらい、わかっているつもりだった。
それでもこんな時は、つい考えてしまう。
非現実なことを願っていたわけじゃない。
どこかで気持ちは繋がっていると信じていて。
バスケがこの想いごと繋げているのだと確かに感じていて。
勝つことが全てだと、疑いもせずに思い込んでいたのだと―――思い知らされる。

「なんて顔をしてるんですか」
「…黒子っち」

黒子は小さな溜息を吐き出すと丁寧な仕草で黄瀬の頬を包み込んで。
涙目のまま視線を下げる黄瀬へ微笑んだ。
変わらない瞳が朧げに揺れて。
けれど、見え隠れする迷いや不安は頑なに隠そうとする。

「―――…変わんないスね、黒子っちは」

黄瀬は諦めたように笑うと大袈裟に溜息をついて、いつものような戯けた風を装った。
自己主張をするだけならいつでも出来る。
だから、困った時は頼ってもらえるように。
いつだって変わらず側にいたい。

「ま、困った時は呼んで下さい」
「困りません」
「なっ……じゃぁ、困んなくても呼んで下さいッス!」


微かな変化に気付くのは
自分だけで良いと思った


fin.
***
《黒子のバスケ》

【アニメ#05】の歪んだ解釈。

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