「ロキの淹れる紅茶って本当に美味しいね」
ルーシィはにこにこと隣で世話を焼くロキを見上げる。
「そう?嬉しいな」
「淹れ方にコツとかあるの?」
「うーん…愛、かな?」
「なにそれ」
へらへらと受け答える彼に呆れたように溜息ひとつ。
いつもいつも、本当に聞きたい言葉は交わされている気がする。
些細なことも大事なことも。
(私が、素直じゃないからかなぁ)
そんな考えが頭を過ると、原因は自分にあるような気がして。
少しは素直にならなきゃ、と思いはするものの。
それは思いの外簡単でもなく、喉まで出かかっては声にならない。
よし、と覚悟をして、ロキに気付かれないように小さく深呼吸をした。
「いいんだ」
「え?」
「ルーシィに美味しい紅茶を淹れるのは僕の特権だから…」
「……」
「僕だけの特権でいさせてよ」
唐突に紡ぎだされた言葉にどきり、として。
何も言えずにロキを眺めていると、ちゅ、と額に唇が落とされる。
「な…な、なんで、」
「んー?ルーシィが可愛いからつい」
ふにゃり、とした笑顔に悪びれた様子などなく。
赤く染まっていく頬を隠す様にルーシィは、ぷい、とそっぽを向いた。
そんなルーシィにロキは、くすり、と笑みを浮かべて。
「ルーシィ、好きだよ」
先程と変わらない調子で伝える。
「……なんでロキってすぐそう言うのかしら」
「だって言わないと溢れ出ちゃうんだ」
困ったね、なんて苦笑して微笑むロキ。
素直にならなきゃ。
ロキの言葉に少しでも返せるように。
「あ……あたしも…」
一生懸命に出した声は少し上擦っていた。
きょとん、とロキが見つめる。
「ロキが……好きだよ?」
自分の意志とは反して上がる熱を意識しないように俯いて、それだけ口にした。
緊張で膝に置いた指先が微かに震える。
ぎゅ、と手を握ってロキの反応を待っているが、いつまでも沈黙が続いていた。
「……ロ、キ?」
不安に駆られて顔を上げると、視界に入ったのは、赤くなっているロキ。
「照れ…て、るの?」
いつも恥ずかしいことばかり言ってくるくせに、なんて考えながら珍しいその表情を眺める。
「ルーシィ」
す、と両肩に手が置かれた。
「それは、僕と結婚するってことでいいんだよね?」
「……は?」
突拍子もなく告げられたその言葉に思考が付いていかない。
「だって、僕ら両想いってことでしょ?」
もうこれは結婚しちゃおうよ、と強引に話を進めようとするロキ。
漸く思考が言葉に追いついてきて、ルーシィは顔中を真っ赤に染め上げる。
そして、
「あ……あほかぁーーー!!!」
とりあえず、右ストレートを食らわせた。
そんな昼下がりのtea time…―――。
fin.
***
ルーシィに紅茶を淹れるロキが急に書きたくなって。
ただそれだけの為のお話。
tea time:お茶の時間
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