瞼の向こうに淡い月明かりを感じ、薄く目を開けると、そこにあるのは変わらぬ自室。
しかしいつもと少し違うのは、隣に眠る少年との距離だった。
「ふふ、可愛い……」
先ほどまでの“男”の顔は、もういつもの“少年”に戻っていた。
少し口が開いたかと思えば、今いる場所が最初から自分の居場所だったかの様に、満足げな笑みを浮かべている。
「ナツは、どんな夢を見てるの?」
あたしは見たよ、ナツの夢。
願わくはナツの夢にも自分が出て来て欲しいと、繋がれたままの彼の左手を少し握ってみる。条件反射の如く握り返された右手にはふわりと暖かさが増し、無意識に笑みが溢れた。
眠りにつく前に窓越しに見えていた月はとうに沈み、東の空が白み始めていた。まもなく世界は朝を迎える。
ふとナツを見上げれば、時折こくりと動く喉にどうしようもなく愛しさを感じ――そのまま引き寄せられる様に唇を落とすと、上から降ってきたのは、眠たげだが心地好く胸に響く低い声。
「……なに、まだ足りねぇの?」
「なっ!起きてたの!?いつから!?」
「さぁな」
彼女の腰をぐっと引き寄せ、金髪に隠れた首筋に顔を埋めると、少年は気持ち良さそうにすり寄ってくる。
甘えるような仕草に、胸が鳴いた。
「――ルーシィ」
前触れもなく静かに落とされた声に、耳を傾ける。
「なに?」
「……いろいろ、あったけどよ、」
――俺、ルーシィに会えてよかった。
いつのまにか埋めていた顔を上げ、視線をあわせてきたナツは、
「今、すっげー幸せ」
心から嬉しそうに、頬を綻ばせた。
それに呼応するように、涙が溢れる。
「っ!、おま、涙腺のネジ緩すぎんじゃねーの」
――こいつは、いつもそうだ。
忘れかけていたことを思い出させてくれるのは、いつだってナツだった。
妖精の尻尾に入って、家族の温かさを思い出せた。
自分の居場所を見つけた。
大切な仲間がそばにいれば、人はどこまでも強くなれることを知った。
強さも弱さも、全て見通されている様で悔しい。でも、嬉しい。
「……うるさい。ナツのせいだからね」
「あ?俺何もしてねぇし」
少年は短く息を吐いたが、もう何も言わずただルーシィを抱き締め直した。
いつもナツは、こうしてただ傍にいて、ルーシィを信じ認めてくれた。
だからこそ、気負い過ぎず自分を伸ばすことができた。
ナツに出会えたから、今がある。
とてつもなく凄いことの様に思えた。
「……あたしも」
「あ?」
「あたしも、幸せ」
思いの外すんなり言葉は唇を跨いで出てきたが、この気持ちはそれに詰めきらないほどに込み上げてくる。
気持ちごと全部ナツの心に届けばいいのにと、そう思った。
「へへ、同じだな」
ルーシィの瞼にそっと口付けると、そのまま再び眠ってしまったナツは、本当に幸せそうな顔をしていた。
シアワセ
――ママ、パパ。
あたし、今、幸せだよ。
ナツがここにいてくれるから、今までの人生を後悔せずに、前を向いていられる。立ち止まることもあるかもしれないけど……きっと、大丈夫だから。
ママたちも天国で仲良くやってよね。
〈シアワセ・了〉
***
Oh, my dear!:みやこ様より1周年記念DLFを頂戴致しました◎
事後ナツルーv
やー、かーわーうーいー。
あーまーいーvv
可愛らし過ぎる甘く静かなやりとりになんだかくすぐったいキモチになりました。
「―まだ足りねぇの?」とか言っちゃうなっつんがすごく好き…っ!!
一周年おめでとうございましたー!
今までもこれからもずっと大好きです◎
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