「私だって女の子よ!」




いい加減、女の子扱いしてください。













そう突然言い放ったあたしに、ナツがビックリしたように目を丸くする。





「な、んだよ急に。女の子?」

「そうよ、あたしは女の子なの!だからそれ相応の扱いをしなさいよ!」

「はあ?何言ってんだルーシィ」



胸ぐらを掴む勢いで語るあたしに、ナツは訳が分からないといった顔で首をこてん、と傾けた。



その姿に少しだけ胸がきゅんとして……って違う違う!



今日こそははっきり伝えなくっちゃなんだから。
この鈍感桜色に。



"女の子扱い"してください、と。




「いあ、訳わかんねぇぞ、ルーシィ」

「わかんなかったら人に聞きなさい!とにかくあたしは女の子扱いしてほしいの。世の中の恋人たちみたく甘やかされたいの!」





だってもうナツと付き合って早半年。
いい加減彼女としては、仲間気分から抜けて恋人っぽいことをしたいのが心情というもので。




断固として譲らないあたしに、ナツが半目で訳わかんねぇとまた呟く。





「扱い変えろっつってもよ、ルーシィはルーシィだしなー」

「とにかくあたしは今のまんまは嫌なの!いくらなんでも未だに彼女を囮扱いするなんて酷すぎるわよっ」

「…お前この間の仕事のことまだ根に持ってんのかよ。しつこいぞ」

「だまらっしゃい!」





とにかく他の女の子達みたいにあたしだってたまには優しくされてみたい。
何が悲しくて毎回囮だの色気がないだの言われなきゃいけないのよ!



そう声を大にして言うあたしに、ナツがさもめんどくさいといった感じでため息を吐く。





「つか、女の子扱いってどんな…うげ」





ナツがぐるりとギルド中を見渡しすと、ある一点でいかにも嫌そうな声を上げた。





「ルーシィ…アレも女の子扱いのうちに入るのか…?」

「…えーと、あれはその、」





ナツが指を指した方向。
そこにいたのは、女の子に膝まづいて指先にキスをする、星霊ロキの姿。


…なんでまた勝手に出てるのよ、アイツ。




相変わらず言いつけを守らないオレンジ頭に頭を抱えながら、隣を見上げると、呆れたようなナツの顔。



確かに女の子の扱いは上手いロキだけど、今のは場面が悪かったと思う。
ナツが呆れるのも無理はない。




「オレ、あんなん絶対無理だぞ。恥ずかしすぎんだろ…!」

「確かに…ナツには無理かもね」




シチュエーションがシチュエーションなら…なんて思わなくもないけど。


どちらにしろナツには有り得ない行為だろう。


そう考えながら、ナツに相づちを打っていると、突然低くなった声が耳に響く。




「何だよ、それ…ルーシィはされたいってことか?」

「え?」

「…まさかロキにしてもらおうとか考えてないよな?」




眉を寄せて、睨むように見てくるナツ。
"ナツには"って言ったことがひっかかったのか、明らかにふてくされてる表情に、少しだけ悪戯心が湧く。





「…それもいいかもねー。ロキだったらちゃんと女の子扱いしてくれそうだし?」

「なっ…」

「ナツなんかよりよっぽど優しくしてくれそうじゃない」




ナツの正面に立ってにっこりと笑ってやると、ナツの表情が焦りに変わっていく。



うわ、面白い…!



普段振り回されてばかりだからなのだろうか。
ついつい調子に乗ってしまう自分が止められなくて。



どんな反応をするのかと内心ワクワクしながら、くるりと背を向けてロキの方へ一歩踏み出すあたしに、ナツの息を飲む音が聞こえた気がした。




「っ…」

「きゃ…っ!」




三歩目くらいだっただろうか。
ぐんっと強い力が肘の辺りを襲う。


痛いくらいの力加減に思わず振り返れば、真剣なナツの視線にぶつかった。




「ナ…ツ?」

「…」




す、とナツの目が伏せられたかと思うと、次の瞬間指先に感じた、柔らかい感触。




「っ…!」



それは先ほどナツが嫌がっていた行為そのもので。


少しカサついたそれが肌を掠める度、体温を急激に上げていく。



ゆっくりと離れていくそれは、離れる寸前吸い上げるようにして、微かなリップ音をあたしの耳に残した。







「っナ…」


「…っうあ、もう無理!死ぬっ恥ずかしすぎて死ねる!」


「……えっと、ナツさん?」


「っさっきの一回だけだかんな!もう絶対やんねぇぞ!?」




まさに茹で蛸という表現がぴったりなくらい真っ赤になったナツが顔を隠しながら叫ぶ。



そんなナツに、胸の奥がきゅんと疼いて。
恥ずかしい思いをしてまであたしに向き合ってくれることがすごく嬉しくて。


思わずその背中に飛び付いて、ぎゅう、と抱き締める。




「な、っルーシィ!?」

「…なんか、女の子扱いとかもういいかも」

「へ?」





だってもう十分伝わったから。
ナツの気持ち。





「ふふっ、満足!」

「よくわかんねぇ…」





色々疲れたのか、大人しくなったナツに背伸びをしながら見られてないことを確認して、その頬にキスをした。




「っ!」

「ありがとね、ナツ。…大好き」




驚いて固まるナツに、もう一度にっこり笑いかけて、徐々に灯る頬の熱に気づかれないように、背中を向けてギルドの中心へと駆けていく。



そんなあたしの後ろで、ナツが小さく"……オレも"と呟いた声が聞こえた気がした。





栗の花:私を公平にせよ、満足


***
君とぼく。:彼方様よりお誕生日お祝いに頂戴致しました。

やきもきなっつんだけでも美味し過ぎてくぁっと脳内が沸騰しそうだったのにロキの真似事を照れながら遂行するなっちゃんが可愛過ぎて可愛過ぎてもうルーシィよかったねと涙流して抱きしめたくなった。

しかもしかも誕生日花が栗の花っていうの初めて知りました!
ゆんはひとつ賢くなった。

恋せよ乙女、素直になれ。
かなたんらぶっ!!!

ありがとうございましたーーーっ!!!


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