鬱々とひとり泣きそうになりながら毛布に包まって。
最近の不運を思い返しながらルーシィは溜息を吐き出した。
「…おなかいたい」
さみしい…その後にそう続く声は小さく噛んだ唇の感触に押し留まる。
ぐるぐると込み上がる気持ちはどれも自己嫌悪に繋がるもので、ひとりでいたいのに独りになりたくなかった。
渦巻く靄を振り払うように首を振って、横になろうと身体を動かした時―――こんこん、と見計らったように扉が開く。
「よぅ、姫さん。具合悪いって?」
「……グレイ」
「どうした?」
自然と涙腺が緩んで、微かに声が震えた。
まるで縋るようにその名を呼ぶと違和感でも感じたのか訝しげにグレイが近寄ってくる。
ふわりと優しく乗せられた掌が前髪をくしゃりと撫でて、宥めるように指先が頬を擽った。
「……ううん、なんでもない」
嬉しいと感じる素直な気持ちと弱った姿を見られることへの抵抗感にふいと視線を逸らして、平静を装う。
それでも、そんな強がりなんて見透かされているのかグレイは小さく笑みを零すと何食わぬ声で言葉を続けた。
「ほら」
「え?」
「この前落としたって言ってただろ」
差し出された袋を受け取って中身を取り出せば、見覚えのあるブックカバー。
それは、先日水路に落としてしまったと嘆いた本と同じものだった。
「今度同じの買ってやるから」と宥められた言葉を思い出して、思わず頬が熱くなる。
「……覚えてて、くれたんだ」
「ちゃんと治ってから読めよ」
「ん…ありがとう」
抱き締めるように本を抱え込んで、そう告げると慣れてしまった冷たさが額に触れてきた。
少しだけ熱を帯びた肌に馴染むひんやりとした感触に目を細めると急に眠気が襲ってくる。
「ちょっと熱っぽいな…」
「んー…あっためてたら治まるから大丈夫」
薄れていく意識の中でそう呟いて、あやすように撫でるその掌を掴んだ。
包み込まれる安堵感に口許が緩んで、吸い込まれるように眠りへ落ちる。
「……ったく、仕方ねぇな」
すぅ、と穏やかな寝息を立てるルーシィを眺めながらグレイは指先を絡め直した。
たまには言葉を交わさずに同じ空間を共有するのも悪くない。
そんなことをぼんやりと想いながらグレイは束の間の静寂に身を委ねる。
真っ赤な顔したルーシィに追い出されるまであと数時間。
***
コンペイトウ*プラクティス:ナギハラ ミズキ様へ一周年のお祝い&誕生日祝御礼。
ナギさんに頂いたナツル`安定体温`が嬉し過ぎたのでグレルver.でお返しをさせて頂きました。
きっと寝起きの混乱した状態のルーシィに追い出されたんだとオモウンダ。
素敵なプレゼントをありがとうございましたーーーっ!!!
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