ふわりふわりと心地良さそうに揺れる桜色。
恒例の如く忍び込んできた一人と一匹を半ば諦めながら迎え入れて、持て成すようにクッキーと紅茶を差し出せば、ナツの前髪がひょこりと跳ねた。
「ねぇ、それ…セットしてあるの?」
「あん?」
かちゃり、とカップを置いた指先を風に揺れる桜髪へと向けて。
首を傾げながら呟けば、クッキーを齧りながらナツが訝しげに顔を上げる。
「当たり前だろ」
「ふぅん……便利ね」
ルーシィは向かいの椅子へと座りながら暢気な感想を零すとはらりと流れた金糸を掬った。
くるくると指先で躍るそれを眺めながらナツは思案気に前髪を弄ると思い立ったようにがたり、と席を立つ。
間合いを詰めるように近付けば、ルーシィが反射的に身を引いた。
開いた距離に思わず眉を顰めて、惹かれるままに柔らかな髪へ触れると無造作に上げた金糸がふんわりと形を変える。
「こうか?」
「……え?」
ついでとばかりにくしゃりと混ぜれば、顔を上げたルーシィの雰囲気がいつもと違って見えて。
薄く染まった頬が露わになって、釣られるように熱が全身を駆け巡った。
「な、んだよ。ルーシィが髪セットして欲しいみてぇに言うから…」
拗ねるように口を尖らせて、誤魔化すように視線を逸らすと一瞬、呆気にとられたように言葉を失ったルーシィがくすくすと愉しそうに笑う。
「…ん、ありがと」
熱が残った前髪へ手を乗せて、恥ずかしそうに微笑んだ姿が`可愛い`なんて柄にもない言葉が思い浮かんで、脳裏を過った想いに咽喉が詰まった。
高鳴る胸の鼓動がどくどくと鼓膜に響く。
変わらない距離は近いのに遠く感じて…―――自然と繋いだ掌からじんわりと熱が染まり合った。
舞い降りた感情
残った熱に気付かされる
fin.
描いて頂いた漫画。
***
Cait Sith Whisker:歌海ねこ様のごまんだ企画へ提出させて頂いた原文。
その名も、「そのお話、漫画にしちゃうぜ企画」。
なんという凄まじい程に素敵な企画…!
調子に乗ってリクエスト満載な文を書いちゃったのは仕方のないことです←
一応、某ナツル神降臨の回のあれです。
なっちゃんが自分で髪型セットしてるあれを観て、是非これはルーシィに手アイロンでセットして欲しいと思って…尚且つ文じゃなくて絵が見たいんだよーう、とねーさんの企画へ提出させて頂きました。
ゆん得感満載で幸せ過ぎて興奮してます。
素敵な企画を本当に本当にありがとうございましたーーーっ!!!
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