澄んだ空気を吸い込んだら肺が冷たくなった。
吐き出した息は熱を含んで白く形を現す。
昇った陽に目を細めれば、熱い掌が冷えた腕を掴んできた。
「ルーシィつめてー」
怪訝そうに口許を歪めてそう言ったナツは、言葉とは裏腹に自身の熱をうつすように抱き締める。
肩に置かれた顎がじんわりと重さを滲ませて。
吐き出す吐息が籠った熱を耳元へ運んできた。
「すげぇ、綺麗だな」
「…うん」
「ハッピーも来ればよかったのになー」
「ほんとにね」
子供みたいに甘える仕草で擦り寄って、ぽつりぽつりと呟くナツ。
くすりと笑みを零せば、呼応するようにきゅぅと腕の力が強まった。
鳴り響く心音さえも聴こえそうな程にぴったりと密着したことに小さく息を飲んで、ルーシィは誤魔化すように思い浮かんだ言葉を紡ぎ出す。
「そ、そういえば今年はドラゴンイヤーなんだって」
読んだばかりの東洋の文化を思い出してそう口にすれば、案の定桜色が視界の端でふわりと揺れた。
「イグニールの年か?」
「いや、何ドラゴンかはわからないけど」
「ドラゴンつったらイグニールだろ」
「…メタリカーナとかグランディーネだっているじゃない」
「イグニールだ」
「あー、はいはい」
言い張る言葉を肯定しなければ話が進まないことへ嘆息して相槌を打てば、嬉しそうに絡めた腕が身体を抱き寄せる。
「で、イグニールがどうしたんだよ」
「と、東洋では十干十二支って言うのがあって―」
暦を始めとして時間、方位などに用いられる60を周期とする数詞があるそうだ。
それが興味深くて楽しくて、夢中で読み耽った物語の話をしていると肩へ置かれていたナツの顔がぐらりと傾いた。
思わず緊張で止まった息をゆっくりと吐き出して、そろりと視線を向ければ期待を裏切らない寝顔がくぅと心地良さそうに寝息を吐きだす。
「…もう」
本当は、ふたりで日の出を迎えられて嬉しかったんだとか。
数え切れない程に過ごした時間の大切さに感謝したりとか。
伝えたい言葉は沢山あったのに。
募った想いを一言へ詰めて。
「これからも、よろしくね」
零れ落ちた吐息は甘さを含んで、漏れた笑みに掻き消えた。
混ざり合った体温に任せて背中を預ければ、ナツの口許が笑みを模る。
包まれた
この温もりがすべて
***
全然お正月っぽくないけど新年一発目sss。
しかもドラゴンイヤー。
なっちゃんがルーシィを後ろから抱き締めて甘えっ子さんヤってればいいと思った新年です。
2012年、明けましておめでとうございます。
相変わらず好き勝手気ままなゆんですが、本年もどうぞ宜しくお願い致します。
*2012.01.01.*
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