※捏造甚だしい上に地味にゼレフ+ナツ風味。
苦手な方は御注意下さいませ。
***

遠い遠い遥か昔、耳に木霊する悲鳴は子守唄に過ぎず、小鳥の囀りと何も変わらないものだった。
奏でる死の音は心地よく響き渡り、漂う魂を尽きることなく求め、苦痛に歪んで絶望していく人々の表情は流れる自然のごく一部分。
血と肉が土に塗れた匂いは砂埃を伝って全身に染み込み、それでも尚、静かに闇へ溶けた感情には何も響きはしない。
世界に存在する魂は、時代の流れの一部に過ぎず、抗うことには何の意味もありはしないと―――そう、思っていた。
回収した魂は寄り集まって大きな魔力となり、世界を無へと帰す。
それはこの時代の在り方であり、それがこの時代での役割。

そうして`その時`は唐突に訪れた。
風が肌を撫で、温もりが心に響き渡り、伝わる香りは過ぎゆく季節を知らせて、聴こえる音は生命の息吹を絶え間なく強調する。
その全てが、気付いた途端に無となって。
その尊さを知った瞬間に存在そのものを拒み始めた。
それらは愛でる程に枯れていき、触れる全ては消えてなくなる。
喉が潰れる程に叫んだ声は、唯只管に孤独だけを伝えているような―――そんな気すらした。

闇と共に歩んだ時間は長い長い時を経て、次第に幕を閉じて新しい時代へと引き継がれていく。
ひっそりと、しかし確実にその染み跡を残して、闇に落ちた影は厳重に封じられた。
生きた証は身体へと刻まれ、時を蓄積して心を豊かにする。
目の前で息をしていたその人の命の鼓動がゆっくりと消えた時、今まで刈り取った命の重さを知ることになった。
満ち溢れる光は輝きを増して、人々の笑い声を色付かせる。
期待、喜び、楽しみ、愛おしさ。
つ、と頬を伝った涙は後悔からか。
儚い命を嘆いて尚も生き続けるこの身体はまるで呪い。

「おまえ、なにやってるんだ?」

がさり、と茂みを掻き分けて覗いた桜色。
驚いたように振り向けば、満面の笑みが投げかけられた。

「いぐにーるのともだちか?」
「イグニール…そうか、君はイグニールの子か」

呟くようにそう零せば、桜色の髪がふわりと揺れる。
早々に立ち去るべきか否か。
迷っている内に無造作に近づいてくる子供に思わず一歩足を下げて。
死の捕食がやってこないように、ある程度の距離を保ってから目線を合わせるように腰を下ろした。

「きみは…きみの、なまえは?」
「なつ、だ!」
「ナツ…イグニールの子。君ならもしかしたら…」
「なにいってんだ?」
「いいんだ、今はわからなくても…」

首を傾げて疑問を浮かべる仕草にくすりと笑みを零して。
絶望の中に差した希望に想いを託す。

「大きくなったら…僕を壊して、ナツ」

拒絶を破壊で消滅させては、人々の悲鳴の中でたった独り―――悪魔の囁きを子守唄のように身の内へ惹き寄せたこの身体はいつかきっと、滅びるだろう。
それがこの時代の在り方。
君がいる時代に置いて、何もしないこと。
今はじっと、その時を待つことがこの時代の役割。

「ナツ…きっと僕を、壊してね」


fin.
***
ゼレフくんがどれだけ難しいかを叩きのめされる程に痛感しました。もう無理。
イグニールと過ごしていた頃のちびナツに実は遭遇したことあるとかそういうの。
記憶にも残らない幼少期ちびナツとゼレフ卿の微笑ましいメモリアル。
「ナツ、会いたかったよ」の件の背景捏造。
だがしかし、表現不足極めたりでした。


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