side TREAT
俺にとって、ルーシィはいつだって特別だった。それがどうしてなのか気付いてから、あいつはもっと俺の特別になった。少し前にそれを伝えてみて、ルーシィも一緒だったのを知って、本当に嬉しかったんだ。
ルーシィにとっての俺も、俺が思うのと同じくらい特別なんだと、そう思っていたのに。
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『ルーシィ!イタズラしたいから菓子くれよ!』
『どのイタズラがいい?おいら的にはイタズラKがおすすめです、あい』
『……あんたたち何かハロウィンの知識間違ってない?』
『細けぇことは気にすんな!で、何作ってきたんだ?』
そわそわ、と黒猫に扮するルーシィからの“treat”を待つ。若干呆れられつつも、右肩に提げられた大きめのトートバッグから出てきたのは、ハロウィン仕様にラッピングされたルーシィの手作りクッキーだった。
『はい、ハッピーハロウィン!』
少し頬を染めながら笑顔満開で渡された瞬間、きゅう、と胸の奥が鳴く。緩みそうになる頬を必死に留めた。
隣でくふくふ含み笑った相棒は、おいらお邪魔だね、今日は空気読んだげるよとシャルルのもとへ飛んでいく。
いつもそうしてくれたら助かんだけど。と思いたいところだが、今回ばかりは居てほしかったかもしれない。仮装したルーシィはいつも以上に可愛く、上手く喋られる気がしなかった。
『……えー、あー、うー、る、ルーシィ、今日、パーティー終わったら『あっ、ナツー!ルーシィも!ハッピーハロウィン!お菓子交換しよっ!』
『リサーナ!ハッピーハロウィンっ』
お前んちで俺からの分渡すから、と伝えようとした矢先、魔女に扮するリサーナが運悪く割り込んできた。とりあえずやり取りが終わるのを待つ。
ルーシィは同じトートバッグに手を伸ばすと、ナツに渡したものと全く同じものを彼女に手渡した。
ん?
まさかこれ、全員同じもの、なのか?
ちょっと貸してくれ、と横から取って見たそれは、今自分が手に握るものと何ら変わらなかった。途端、心に僅かな不満が宿る。
……俺は、ルーシィの特別、だよな?
きっと渡し間違えたんだとその時は自己解決したのだが、
『なに、あんたまだ欲しいの?今日は一人一つずつしか用意してないし、また今度作ってあげるからそれはリサーナに返してよね』
平然とルーシィは言い放った。
半ば放心状態で言われた通りに返すと、代わりにリサーナからパンプキンタルトが渡された。
俺は、ルーシィにだけ、ルーシィが一番喜びそうなものを用意したのに。
お前からは、何も無ぇのかよ。
僅かだった不満は膨張し、やがて黒く凝り固まってゆく。
『ところでナツは何くれるの?早くくれないと昔のナツの恥ずかしい話、ルーシィに暴露するわよ?……ってナツ、聞いてる?』
『……ん?ああ、ほらよ』
ギルドで配る用に買い占めておいた激安キャンディーの袋詰めを渡すと、リサーナは機嫌良く去っていった。
その背中を見送った後ルーシィの方へ向き直る。
見ればそこに先ほどの笑みはなく、代わりに見覚えのある翳りが居座っていた。
これは、寂しがっているときの顔だ。
ルーシィが口に出さなくても、ナツにはわかる。
いつも、一番近くで見てきたのだ。
『ナツ、あたしには無いの?』
『んぁ?ああ、あとでな』
なんだよ、あんな顔しやがって。
先に寂しくなったのは俺だかんな。
イタズラKを決行しよう。
ルーシィからの、俺だけがもらえる“treat”が欲しい。
今夜覚えとけよ、と何も解っていそうにない彼女へ胸のうちでそう告げると、ナツは少し前からおっ始まった男どもの喧嘩に殴り込んだ。
《TREAT・(強制終)了》
→おまけ◆
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Oh, my dear!:みやこ様よりはっぴぃはろうぃん兼10000hits記念に頂戴致しました◎
特別が欲しいのはお互い様。だけど特別の形は様々で気付きにくい。
ルーシィから特別なお菓子が欲しかったなっちゃんが…!
膨れるなっちゃんが…!
そしてリサーナへ渡した瞬間のルーシィを思うときゅぅんってなります。
なんて可愛過ぎるふたりなんだ。
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