ざわざわと喧騒が渦巻くギルド。
目の前には大層機嫌が悪そうに口を尖らせるナツ。
ふわりふわりと落ち着きのない様で桜色が揺れて。
何かを言いたそうに口を開いては悔しそうに唇を結んだ。
青い仔猫はじっと食い入るように見つめてきて。
同様にギルドの仲間たちも好奇の視線を向けて、喧騒の中で耳を澄ましている。
ルーシィは諦めたように溜息一つ、ゆっくりと読み掛けの本を閉じて漸く口を開いた。

「何か用かしら」
「スッゲェ騒がしいギルドだね」

求めていた返答とは程遠い言葉にひくりと頬が引き攣る。
文句でも言ってやろうかと振り向けば、彼は愉しそうににっこりと笑った。

「やっとこっち向いた」
「…あんたね」

迷惑だ、と訴える表情をまるで無視して。
揺れる桜色の奥で睨みつけてくる双眸に目を細めて。
くすりと微笑んだかと思えば、彼はわざとらしく金糸へ手を伸ばす。

「この前言ったじゃん」
「へ?何を」
「この街初めてだから案内してくれって」
「っ…そのために、わざわざ来たの?」

息を飲んだ音と見開いた琥珀色。
色付いた頬が薄く染まり、意識が周囲から逸らされた瞬間―――勢い良く椅子が蹴り飛ばされた。

「な、ナツ…?」

瞬き一つ、どうしたのと言わんばかりの声が恐る恐る漏れて。
騒がしかったギルドは途端に静かになったが、それも束の間。
数秒後にはすぐに何事もなかったような騒々しさを取り戻す。
固く結ばれた唇が微かに震えて、発せられた声はざわめきの中へと掻き消されると扉の音が重く響いた。
ルーシィは首を傾げながらも穏やかでない空気に瞳を伏せて。
滲んだ視界を誤魔化すように小さく息を吐き出す。
喧騒に滲んだその表情は憂いを帯びて。
強く印象に残る、なんて過った想いに思わず苦笑した。

「あいつ…彼氏?」



然して驚いた様子もなくそう問いかけて。
桜色の消えた扉を一瞥すると、視界の端で金糸が揺れる。

「…違うけど」
「けど、ね…」

余裕そうに装った態度はつまらなそうに吐き出した声で台無しになった。


***
アースヒューズくん、ルーシィに会う為にギルドへ行くの談。
またもや眼鏡掛けてたら悶えるという妄想に`ヴェラーノ:アル様`が挿絵を…!
暴走が爆発を起こしてヒューズ祭開催に至りました。
ただ、ひとつ気に入らないのが文に眼鏡描写を入れ忘れたこと。
いつかその内リメイクするつもり。つもり…。


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