side TRICK
「ルーシィ!」
真夜中だというのに、こいつは。
少しは時間を気にするということはしないのだろうか。勢いよく窓から侵入してきた桜髪を見て、一つ溜め息をついた。
「……何、こんな夜更けに。お菓子ならもうあげたでしょう?」
今日はギルドでハロウィンパーティーだった。みんなで仮装して、お菓子を配って一頻り騒いで。本当はもう少し居たかったが、期待していたものを期待していた人物から貰えそうになかった上、ギルドにいれば見たくないものも見えてしまうわけで。仕方なくつい先ほど帰宅したのだ。明日は仕事もあるし、早く寝かせてほしい。
「いあ、菓子はもらったけどまだルーシィにイタズラしてねぇ」
「……あんた、ハロウィンのルールを履き違えてるわよ」
イタズラしない代わりにお菓子を貰うんでしょうが。と言う説明に耳を傾けることもなく、ナツはベッドの上に腰を下ろした。
「つか俺お前に菓子あげ忘れてたなー……ま、まさかすでにイタズラとかしてねぇよな?」
「なんでそんなに怯えるわけ。あたしはあんたみたくイタズラに執念ないし」
そっか。セーフ、セーフ。とあからさまに安堵するナツ。おおかたルーシィがしそうにない随分なイタズラを想像していたんだろう。失礼なヤツめ。
「おま、疲れた顔してんな。なんかあったのか?」
自身で用意したのであろう飴を一つ頬張りながら、こてと首を傾げるナツにどき、と胸が跳ねる。まさかこいつから一番にお菓子を貰えることを期待していたせいで、それがリサーナだったことに落ち込んだ、とは口が裂けても言うまい。
カロン、と飴を転がす音が沈黙を破る。
「……別に何も。てか早く帰んなさいよ、明日仕事なんだから」
「おう。ルーシィにイタズラしてからな」
「だからお菓子あげたでしょ……っ!?」
突如寄せられたナツの唇。話途中だったせいで半端に開いた自身のそれを割って、ナツの舌が飴と共に侵入してくる。
ナツの方へ、ルーシィの方へと甘い塊を行き来させながら、ゆっくりその味を確かめるように時おり唾をすすられる。
転がす度にその糖度が増していく気がした。
「ナ…、ツ、………ちょ、ん、も、苦し……んっ」
「……は、……もう……少し…」
二人の口内で溶けゆく飴のように全身が溶けてしまいそうだと、ルーシィははっきりしない頭の隅で思った。
なけなしの欠片が溶けきってからしばらくして、ようやく呼吸を許される。
「ごちそーさまでした」
「……はぁ、もう……なんなのよ、ほんと」
「だからイタズラするって言ったじゃねーか」
だからって、こんなこと。
まだ体の熱は覚めやらない。
「イタズラも成功したし、そろそろ帰るわ」
「ちょっと待ちなさい」
すかさず目の前のマフラーを引っ張る。
しかし。さっきやられたようにするのは恥ずかしすぎる。無理だ。思い出すだけで顔がゆで上がる。でも、やられっぱなしなんて、許さない。
……ええい、なるようになれ。
震える足を叱咤して背伸びをして、ちゅ、とその口にリップを移してやった。
→TREAT!
***
Oh, my dear!:みやこ様よりはっぴぃはろうぃん兼10000hits記念に頂戴致しました◎
「ごちそーさまでした」っていうなっちゃんが炎を食べるのと同じようにルーシィを食べることが日常ならイイ、と良くわからない方向へ脳内が沸いたのは内緒。
かわういなつるーにによによしましたv
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