ジュ、と火薬に点火した音と、同時にそこから細く上がる煙。
風向きが変わり、喉へと飛び込んできた硝煙の匂いが鼻へと抜け、思わずむせる。
「ちょっと、落ちるじゃない!」
途端にぴしり、とルーシィから言い放たれ、慌てて口を塞ぐ。
少しはオレへの気遣いを見せてもバチは当たらないだろう、と言いたい所だが。
真剣な眼差しを紙縒りの先に生まれた球へと向けているルーシィに、今は何を言っても無駄だと諦めた。
「うわぁ…」
パチ、パチパチパチ、と球から生まれ始めた閃光に、ルーシィが感嘆の声を漏らす。
光が飛び出す反動でゆらゆらと紙縒りが揺れ、支えるモノのない球がジジ、と音を立て。
あぁ、やべぇかな、と思った瞬間。
そいつは光を放ちながらぽとりと地上へ落ち、姿を消した。
「あぁ、もうっ。ナツが咳なんかするから!」
「オレのせいじゃねぇだろ。ルーシィの持ち方が悪…」
「なんですって?」
「うぐ。…何でもねぇよ」
ぴく、とルーシィの眉間が痙攣し、慌てて彼女が持ったままだった残骸を引っ手繰り、新しいのを渡す。
どこか納得いかないと無言の圧力を掛けられる時間が少しだけ続いて。
やがて、溜め息をつきながら再びルーシィがその先端をろうそくへと翳した。
「今度は邪魔しないでよね!」
「へーへー」
「しっ!静かにっ」
オレンジ色に燃え上がった先端が、上へと燃え伝わりながら丸く球へと変化していく。
これだけは、何度見ても不思議な光景。
どうしてただの紙縒りが丸くなって光を放つようになるのだろうか。
「…いい調子…っ」
ジジジ、と細かく震えながら大きくなっていく球。
パチ、と火花が飛び出せば後は次々と飛び出してくる閃光。
「あ…、終わっちゃう」
やがて大きな火花が徐々に小さく、細く。
風に揺れる柳のように。
そして音も立てずに生まれるようになった光の線は、まるで流星群のように流れ、闇へと消えた。
「あーぁ、無くなっちゃった」
紙縒りの光も燃え尽き、残された黒い闇。
ただの紙縒りとなった線香花火を、少し寂しげにルーシィが笑う。
目に焼きついた光線との落差はそれほどに大きい。
「ばーか。またいつでもやれんだろ?」
「それはそうなんだけどさ、何か寂しいじゃない」
「そうかぁ?オレは別に」
「あんたには情緒ってもんがない訳!?」
燃え残った紙を拾い集め、ルーシィが持っていた分も合わせて袋へと仕舞う。
もう光も熱も放たないソレは、ただの紙屑。
それはルーシィも分かっているのだろうが、…そう簡単に片付くものでもないらしい。
「おい」
「なによ、…って、ちょっとナツ!?」
「また買ってやるって」
だから、そんな顔すんな。
精一杯の思いを込めて、ルーシィの手をぎゅっと握り締める。
戸惑うようにさ迷っていた指先にも、やがて同じく力が込められて。
何気なく。当たり前のように。
互いに顔を見合わせて、くっと笑う。
「子供だよな、ルーシィは」
「何よそれ」
「花火ぐらいで泣くなよなぁー」
「泣いてないっ」
イー、と向けられた歯に、お返しだとぎゅーっと力を込めれば。
くすくすと笑いながら、楽しそうに浮かべられた笑顔。
「それに、…燃え尽きないモノもあるだろ」
なにが?と不思議そうな顔をしたルーシィへ、腕を持ち上げながらにかっと笑う。
かぁ、とその顔が真っ赤になったのを、オレは見逃さなかった。
***
Guroriosa:碧っち。様よりナツルーの日を頂戴して参りましたっ!
浴衣…!
そして線香花火v
儚げに笑うルーシィが愛おしくて仕方ないです。
「また買ってやるって」とか言っちゃうなっちゃんが可愛過ぎてときめいて溶ける。
燃え尽きないナツとずっといっしょにいてふたりで笑い合っていればいい。
遅すぎる程に今更頂戴しましたがっ!
快くどうぞって言って下さったあおちゃんに感謝感謝。
本当にありがとうございましたーーーっ!!!
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