ゆらゆら揺れる、金糸。
ふわふわ靡く、桜色。
暖かな気候。
「あ、起きたの?」
んー、と伸びをして振り向けば寝起き眼を擦るナツと目が合った。
「あぁ」
「まったくもう、人のベッドで眠るのやめなさいよ」
呆れながら溜息交じりでそう吐き出せば、尤もらしい言い訳が返される。
「仕方ねぇだろ、眠れなかったんだから」
「あんたね…」
ここは宿か、と出てきそうな言葉を飲み込んで小さく深呼吸をした。
「紅茶、淹れるけど飲む?」
「おう」
キッチンへと向かうルーシィの背中を見送りながら再びごろん、と横になって。
(…なんか、ルーシィの匂いは落ち着くんだよなぁ)
充満する甘い香り。
暖かな匂い。
「飲んだら帰りなさいよ」
「残忍なやつだな」
「ベッド貸して紅茶まで出してやってるのにその言いようって」
ひくり、と口許を引き攣らせるルーシィ。
かちゃり、とテーブルへ置かれた音と同時に身体を起こす。
「いいじゃねぇか、ケチケチすんなよ」
「あんた本当に、自由よね」
深い溜息を吐きだして半ば諦めたように呟いて。
顔を上げれば間近に映る桜色。
「ち、近い!」
「あん?全然近くねぇだろ」
首を傾げながら近付く身体を押し返せば、その腕が絡め取られて。
どんどん、と視界がナツで一杯になる。
ルーシィで一杯になる。
吐息が混じり合う距離まで近付こうとして―――。
過った香りにくん、と鼻を鳴らした。
「ルーシィ」
「な、なによ」
(独特な香水の匂い―――?)
「変な匂いがする」
眉を顰めながら誰だ、と口を開ければ声になる前に殴り飛ばされる。
「あんたって……そうよね」
床に飛ばされた身体を起しながら殴られた顎を押さえて。
(―――香水、あいつのだった…よな?)
首を傾げながら思考を巡らせていると深い溜め息が吐き出された。
fin.
***
《04.17-05.07*拍手お礼》
re;:return:戻る,帰る,復帰する.
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