※ヒューズ+ルーシィ的な何か。アースヒューズくん設定。(要するに完全捏造)
苦手な方は御注意下さいませ。
***

それはきっと偶然。
もしかしたら必然かもしれない。
既に一度は自分の顔と同じ人に出会った事実を思い返せば、例えばこの世界で再びあの世界の住人に出遭うことだって十分に有り得る。
そんなことをぼんやりと頭の片隅で言い聞かせながら以前見た時よりも身軽な服装をしている彼を眺めた。

「この本を取りたかったんでしょ」

軽い口調も少しだけ高い声も笑い方もまるでそっくりで思わず声を失う。
それでも立場が異なっている所為か幾分物腰が柔らかいような気もして。
観察するようにじっとその仕草を追いながらまとまらない思考を掻き消した。
ドウゾ、と渡された本を半ば反射的に受け取って。
戸惑いながらも小さくお礼の言葉を口にする。

「あの、ありがとう」
「どういたしまして。オレもコレ好きだよ」



「へぇ、あなた本読むのね」
「ん?俺のこと知ってるの?」
「あ…う、ううん」

微笑むように口許を綻ばせた表情が意外だ、と感じてつい口を出た言葉に彼が首を傾げて。
同時に軍服姿と照らし合わせていたことに苦笑した。

「…この後って時間ある?」
「え?…うーん、まぁ少しなら」
「スッゲェ可愛いよね」
「へ?」
「折角出逢ったことだしお茶でもしない?」

言われた言葉を理解するよりも先に手にしていた本が目の前を横切って。
言葉にならない声で詰まっている内に包装された包みが渡される。
あまりにも自然な動作に茫然としているとくすり、と笑みが零れてきた。

「その本に興味示すってことはケム・ザレオンとか好きでしょ」
「え、なんで…」
「オレも好き」

戸惑っている行動も全て見透かしたような笑みでにっこりと微笑んで。
棚に並んでいる本の背表紙をトン、と叩くと胡散臭い笑顔のまま眼を細める。

「この街初めてなんだ。良かったら案内してくれない?」

まるでどこかの星霊を思い出させる軽さに少しだけ呆れて。
溜息一つ、腰につけているホルダーを確認して口許を緩めた。

「いいわ。その代わり奢りよ?」
「勿論」

交渉成立、とでも言いそうな雰囲気にどこか親近感が湧いて。
身構えていた警戒心も好きな本の話をしている内にすっかり溶けてしまって。
自然と笑顔になった頃、目的のカフェが見えてくる。

「あ。あそこ」
「オイ」

頭の中には既に食べたいケーキの映像が浮かんでいて。
緩んだ気持ちのまま腕をあげた瞬間、低い聴き慣れた声が背後から聞こえた。
考えるよりも先に振り向けば予想通り見慣れた桜色が目に入る。

「ナツ!」
「何してんだよ」

驚いてその名を呼べば、ナツは不機嫌そうに眉を顰めた。
普段の能天気な笑顔でないことに疑問を覚えて。
質問に答えようと口を開くも彼の視線は自身の後ろへと向けられている。

「何ってケーキ食べに…」
「違ぇだろ、ソイツ――」

苛立つような声に後ろを振り向いて漸く不機嫌の原因に思い当たった。
きょとん、とナツを見下ろしていた彼は話題が自分であることに気付いたのか「あぁ」と納得したように声を零して。
言い淀んだルーシィの代わりに答えようと口を開くが、言葉を紡ぐ前にナツは訝しげに眼を細める。

「誰だ?」
「あ、あんたね…」

覗き込むように一歩、二歩と近づく桜色へあからさまに嘆息して。
説明する為に息を吸い込めば、ふと頭上に違和感が走った。
つられるように顔を上げると、ふわりと金糸が撫でられる。

「なんだか時間が掛かりそうだからまた今度」

あっさりと告げられた言葉に答える間もなく、視線だけ追いかければ彼は愉しそうに口許を歪めた。
弧を描くように笑みを零すと小さく何かを呟いて。
交わすようにナツと視線を合わせるとゆっくりと離れて行く。

「―――…に言ってんだ」
「え?」
「なんでもねぇよ」

聞き返すように横を振り向けば、口を尖らせてナツは低く唸った。


***
ヒューズくんが愛おし過ぎて妄想が爆発した後にアースヒューズくんを生み出したゆんへ`ヴェラーノ:アル様`が挿絵をくれたヨ!

アースヒューズくんとルーシィの出会い編。
`纏う色が変わる時`へ続く。
ナツルー色が滲むのは仕様です。


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