「…誰?」

どん、とドアから響いた音に、恐る恐る声をかける。
だが。―…無言。

そっとドアに近付き、ノブを回す。
キィと僅かにドアが開いた瞬間、ごろりと部屋へ転がり込んできた物体。

「え。ちょ、ちょっとナツ!?」

よぉ、と力なく微かに手を挙げて、そのままぱたりと落ちてしまった腕。
赤い顔。荒い呼吸。大きく上下する胸。
これは、もしかしてもしかすると。

「あんた、ちょっとすごい熱…!」

額に当てた手のひらから伝わる体温は、明らかに常温を越えていて。
そのあまりの熱さに、ルーシィは慌てて部屋へ引きずり込んだ。

「なんで出歩いてるのよ!」

とにかくベッドへ、…と思うも、ぐったりしたままのナツを運ぶ力はなく。
かといってそのままにしておく訳にもいかず、慌ててタオルと布団を手にナツの元へと戻る。
相変わらずぴたりと閉じられたままの瞼と、濁った音を立てる喉。
多分、風邪だろうと思うが、…それよりも。

「こんな体で、どうしたのよ一体」

額に濡らしたタオルを置き、体を冷やさぬようにと布団を掛ける。
自分の体が調子悪い事ぐらい、いくらナツでも分かっているハズだ。
それなのに、わざわざ部屋へ来た理由は。

「んー…。ルーシィ…?」
「そうよ!って、ナツ!?」

布団にくるまれていた腕が、もぞりと現れ。
そのままきゅっとルーシィのウエストへ巻き付き、持ち上げられた顔がルーシィの膝へ。
突然の出来事に、ルーシィが慌ててその顔を払い落とすよりも早く。

「あーー…。ホント、だ……」

安堵したように浮かべられた笑みと、落とされた吐息。
そして、そのままスースーと寝息を立て始めたナツ。

そんな横顔を見つめ、ルーシィは振りかざしていた腕をそっと静かに下ろした。

「まったく、あんたって…」

いくら有言実行とはいえ、何もこんな時に実行しなくてもいいものを。

つい先日、ほんの些細な事で口喧嘩をした。
その時、ナツが言っていた事。

“オレはいつだってルーシィの傍にいたいんだ!”

何をバカな事言ってるの、と言い返した事は記憶に新しい――…。

「ごめん。ごめんね…」

本当は、とても嬉しかったんだよ。
本当は、すごく幸せだったんだよ。

でも、意地っ張りだから恥ずかしさが先に立って。
…素直に、喜ぶ事が出来なくて。

額に乗せたタオルを直しながら、その上に手のひらを重ねる。
タオル越しにも伝わってくる、ナツの熱。
こんなにも無茶をして会いに来たのは、…私の為。

「ありがと、…ナツ」

目が覚めたら、“信じてるよ”ってちゃんと言おう。
ナツの気持ちは伝わってるって。
そして、私も同じ気持ちだって打ち明けよう。

自分の気持ちから、逃げずに。

「早く元気になって」

私はここにいるから。

―…ずっと、貴方の隣に。


***
Guroriosa:碧っち。様よりナツルーを渇望していたゆんへのプレゼントを頂戴致しました。

か、かわい…!
ナツ可愛いデス…っ!

いつだって傍にいたいなっちゃんにきゅんきゅん。

うわん。
ありがとうございましたー!


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