これ、いいかも。
そう思った瞬間、ルーシィは両手に一つずつマグカップを取っていた。
ピンクと、青とを、一つずつ。


「………えーと…」


そうしてそのまま暫し呆然とする。なぜ2つも手にしているのか、なぜ色違いなのか。

持ち手がツタのように装飾されたマグカップは、だからといって持ちづらいわけでもなくなかなか機能的だ。容量も問題なし、カップ表面の柄もシンプルで可愛い。ソーサーとティースプーンも付いているし、損はしない商品であった。
だがルーシィ宅には、客用のカップが既に4セットあるし、普段使いのお気に入りカップも勿論ある。


(じゃあ、これ、どうする気?)


ふらり立ち寄った店先だというのに、ルーシィは両手に持ったマグカップを見つめて黙り込んでしまった。


「ピンクがルーシィで、青がオレ?」

「…っ!?…、な、なななっ、」

「あ?違ェの?」


…その時。
ひょい、彼女の後ろからその手の内をのぞき込んだナツが、想定外な言葉をさらりと言ってのける。
急に話しかけられたことと、思わぬ話の方向に、ルーシィはびくりと肩を震わせた。

そして、そこでやっと気づく。


(そ、そっか。あたし、ナツとお揃いにしたかったんだ…)


毎晩のように不法侵入を繰り返すナツ。そうくれば、毎晩のように彼に飲み物を出すのも当たり前のことであった。
しかしその時出すカップは、ルーシィ愛用のものと客用のもの、というちぐはぐな2つ。
恐らく……無意識ではあったけど、彼女はそれがイヤだったに違いない。ナツと2人でいる空間を特別に思い始め、その特別に相応しい『2人だけの時に使う』カップが欲しかったのだ。だからこうして、色違いを手に取ったのだ。

気付いた途端、じわじわとルーシィの頬が赤くなる。それを見たナツが、首を傾げた。


「どした、具合でも悪ィのか?早く買ってこいよ」

「なっ、ななな何でもないわよ!」


どうせ大した意識もしていないだろうし、簡単にお揃いを思い浮かべられる意味に気付いてもいないだろうけど。自分から答えを投下しておいてこの男、具合が悪いとはどういうことだろうか。
ルーシィは不整脈を奏でる心臓を押さえながら、ナツにあたるように言った。


「て、てゆーか、なんであんた買ってもらうこと前提なのよっ!いいいつも来るから仕方なく、仕方なくだけど、ひゃ、百歩譲ってお揃いのマグカップはいいわ!でも、あたしが用意するのはおかしいじゃないの!」


すると彼は、きょとんとした表情を浮かべた後、悩むような素振りを一つして。
暫くの後、思いついたように手を叩くとルーシィの手からピンクのカップを奪い取った。


「わかった。じゃあ俺は俺の分を買うから、お前はお前の分だけ買えよ。それならいいだろ?」

「え?え、あ、うん。それは全然いいんだけど…え?てゆーか、ピンク?」


しかし今度は彼女がきょとんとした表情を浮かべる番だ。先ほどナツは自分で『ピンクがルーシィで、青がオレ』と言っていたのに…なぜ自分の分だと言ってピンクを取ったのか。ちんぷんかんぷんな展開に、ルーシィは首を傾げる。

そこでナツは再びさらりと…無自覚、無意識、そう言われるにふさわしい言葉を、さらりと吐いたのであった。


「あ?だってこれ、俺の髪の色だろ?んで、そっちはルーシィのリボンの色。だから、俺は俺の色買ってルーシィにやっからさ。お前はお前の色買って、俺にくれよ」


……ばふっ!!!

先ほどとは全く違う赤面の仕方、爆発するように一気に真っ赤になったルーシィは、口をぱくぱくさせながら地面に座りこむ。

それにつられてしゃがんだナツは、下から覗き込むようにその顔を見て。
やはり意味などよくわかっていないくせに、真っ赤なルーシィの頭に手を乗せながら、満面の笑みを浮かべたのだった。


***
Ms.Perfume:ティアラ様より100000hit記念DLFを頂戴して参りました!

ルーシィの全てをやんわりと受け入れるナツが本当素敵v
側にいて当たり前なふたりにきゅんきゅんして仕方ないです。
ルーシィがナツを想っていること、ナツがルーシィを想っていることが当然なナツがもう本当に大好きです!
無意識にお揃いにしたがるルーシィが犯罪級に可愛過ぎてどうしようかと思いました。

`大志を抱け`の自覚ナツも素敵過ぎてにやにやしちゃって仕方なかったです。

100000hit、復帰、本当に本当に、おめでとうございます!!
これからもひっそりこっそり堂々と毎日応援しております◎


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