自分の足で歩くより、一段高い視界。
そこから見渡す通り添い、ほぼ全方位から全身――否、主にスカートからニーハイソックスまでの絶対領域か――に向けられる様々な視線に恥じらって、ルーシィは真っ赤な顔で両足をばたつかせた。
「お、おっ……下ろしてよぉ!」
「まともに立てねぇくせに何言ってんだ」
細い身体を軽々と担いだナツは、そんな数知れぬ視線を感じさえしないような顔色であっさりと答えてくる。
「〜〜〜〜っ、あり得ない……!」
「っせぇな、もうすぐ着くって」
ナツがルーシィを女として意識していないのは百歩譲って許せても、公衆の面前でのこんな仕打ち――酷すぎる。
涙目になりながら、心底困り果てていた。
昨夜から今朝にかけて、チームで郵送物の護衛に出ていた。依頼主の懸念通りに護送団は盗賊の夜襲に遭い、当初の作戦通り、ルーシィが絵画と郵送係を、グレイがルーシィをフォローして町まで走った。
結果、輸送物の絵画は無傷で守られ、久しぶりの報酬満額を手にするに至ったのだが――ルーシィは足元がおぼつかなくなるほど魔力も体力も消費しきって、ことここに至るハメになった。
「うぅ、せめて違う抱き方にしてよ……」
「あん? 何でだよ」
「は・恥ずかしいからでしょ!? 」
顔を赤らめ、ごつんと肘で桜色の頭を小突く。痛ぇなと文句が上がり、至近距離で目が合って、ああもうと溜息を落とした。
(鈍すぎるわ……!)
仕事での超破壊と大幅減俸がお手の物なのは知っているが、今度はルーシィの評判まで壊すつもりか。
荷物のように肩に抱き上げ、表通りを揚々と――こんな様を晒されたのでは、ルーシィの株の暴落は避けられまい。
好奇の視線が刺さる、刺さる。
「女の子の扱いがなってないんだから!」
「いちいち固ぇこと言うなよな。つか、足そーやってっとパンツ見えんぞ?」
ひっと喉を締めて、ばたつかせていた足を大人しく止めた。短いプリーツを無理矢理に引っ張って、ナツを睨む。
そういうことは、もっと早く言うべきだ。
いっそう恥ずかしさが込み上げて、誰とも目が合わないように――腕を掛けて掴まっていたナツの右肩に顔を伏せる。
すると必然、頬に鱗の模様が触れて。
(……そういうのって、結構大事よ?)
(もっと、ちゃんと躾けてよね!)
まだ相まみえぬその親に。
胸の中で、クレームを付けた。
――だって、だってね?
――お嫁に行けなくなったら困るもん。
(責任、取らせちゃうからねっ)
***
Absurd Lovers:ゆーく様よりちゃっかりしっかり頂戴して参りました。
何が素敵ってルーシィのクレームv
いぐにーるへの。
ナツがルーシィを担ぐシーンが本当好き。
そして毎度ナツの「痛ぇな」とか「うるせぇな」の文句がお気に入りv
更に`お嫁に行けなくなったら困るもん`にノックアウト。
犯罪級に可愛くて仕方ない。
移転関連では全く迷惑被ってないですが素敵小説をありがとうございます!!
移転作業本当にお疲れさまでした^^*
これからも変わらず通わせて頂きますv
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