ぱらぱらと雨の音がして目が覚める。
窓の外には朝が静かに広がっていた。
いつもより温かい陽だとぼんやりと思いながらもう一度眠りに就こうとした時、じっと見つめてくる視線に気付いて。
首だけを動かせば、シーツから半分だけ顔を出して恥ずかしそうにしているルーシィと目が合う。

「…おはよ」

小さく投げかけられた挨拶。
手や足が、柔らかな肌の感触を突然に理解した。
抱き締めたまま眠っていたのだと。

「おう」

咄嗟に答えて、急に気恥しくなって。
視線を外すと咎めるようにルーシィが拗ねた声を上げる。

「全然、離してくれないんだもん」

昨晩は、まだ足りないと求めるだけ求めて腕に引き込んだことを思い出した。
そこまでは、記憶がある。
その先は、どうやらそのまま眠ってしまったらしい。

「悪ぃ」
「ナツが寝てる間に……服着たかったのに」

ふと、夜の名残りのような甘さを少し含んで、ルーシィが言葉を零した。

「服?……別にそのままでもいいだろ」

柔らかな肌が心地良い。
必要ないだろ、と返すと、思い出したように言葉にならない声を漏らすルーシィ。
もう、とシーツを引き出して、それを羽織るように体ごとくるまって、立ち上がる。

「待てないなんて、聞くんじゃなかった」
「う」

ベッドの側に転々と落ちている衣類は情事の後を鮮明に残していた。

「ちっとも優しくしてくれないし」
「いあ」
「無理って言ってるのに全然やめてくれないし…」
「はい」
「下着のホックも壊しちゃうし。高かったんだから、これ」
「わ、悪かった、よ」

反論出来ずに謝ると、ルーシィは衣類を拾って、こちらを向いた。
口を小さく開いて、少しの間が空く。

「……もっと、キスしてほしかったのに」
「…っ」

シーツで足下まで隠れたその姿が、昨夜の情事を思い出させた。
甘い匂いがする。

(また、だ)

がりがり、と頭を掻いて、真っ赤に頬を染めているルーシィへ眼を向けた。

「…変な顔してんぞ」

照れ隠しの一言に、投げられた衣類。
声を上げて笑って一言。

「こいよ」

しばらく黙って腕を差し出せば、飛び込んでくるルーシィ。

「…誰のせいだと思ってんのよ」

小さくそう呟くルーシィに、満面の笑みを向けて、抱きしめて、望み通りにたくさんのキスを。
雨の音にも相俟って、甘い甘い朝が来る…―――。

「俺の所為じゃなきゃゆるさねぇよ」


fin.
***
突発的に書きたくなったナツルー事後。
もう脳内大丈夫かな…。


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