「おい苗字。何してんだよ、行くぞ!」 「え、あ・・・うん」 名前は曖昧に頷いた。 (あれ・・・なんかおかしくない?どうなってんの、これ) 名前は一度深呼吸をして心を落ち着かせると、思い出す。 確か、すべては放課後に図書室に行ったところまで遡る。 あまりに読書に集中していたらしく、気付けば六時過ぎになっていた。 それで帰ろうとしていたら、図書室のドアが開き、この狩屋マサキが現れたのだ。 そこから何故か一緒に帰宅する事になったのだが・・・ 「狩屋くん、私達って初対面よね?」 「おう」 「たしかきみって・・・何と言うか、もっと優しい小動物みたいな子だったような記憶が・・・」 「アレ、作ってるし」 「で、すよねー。・・・あれ?」 (何で彼は私の名前を知っていたのだろうか・・・) 名前はクラスでも特に目立つ方ではない。むしろ一緒に居る友人の方が人気がある。 (なんでだろう・・・) 「ねえ、狩屋・・・くんは何で私の名前知ってるの?」 「・・・ばっ、馬鹿野郎?!」 「ええ!?何で!」 「そんな事も解かんねえのかよ!鈍過ぎるだろっ」 「あ、よく友達に言われる」 「何でちょっとテレてんだよ!全然褒めてねーよ!」 「あ、そうなの・・・」 「少し残念・・・」と方を落とす名前に、狩屋は大きなため息を吐く。が、すぐに顔を引き締めると叫んだ。 「お、まえの事が気になってたからに決まってんだろ!! 真っ赤な狩屋を見、次は自分が赤面する番だった。 彼の言葉の意味を理解すると同時に、羞恥心が湧き上がってくる。 「あ、う、えと・・・あ、う、ご、ご、」 「ご?」 「ご、めんなさああい!!!」 叫ぶと同時に逃亡する。 一刻も早くあの場を去りたかった。 「・・・・あの野郎・・・」 この場に残された狩屋が青筋を浮かべ、怪しい笑みを貼り付けたまま、「明日覚悟しとけよ・・・」と呟いていた事も知らず。 一期一会 一生に一度だけの 出会いのこと |