※年齢操作(虎丸+1歳) 「楽しみですね、明日!」 「そうだね」 辺り一面が茜色に染まる頃、私は後輩の虎丸くんと帰路についていた。明日のことで頭がいっぱいだからかさっきからずっと彼の頬は緩みっぱなしだ。 “ねえ円堂くん。今週の土曜日の練習は休みでしょ?せっかくの機会だし、たまにはみんなでお出掛けしない?” “あっ!それなら遊園地はどうですか?私、今日友達に遊園地のチケットもらったんですけどこれ使うと団体料金がさらに安くなるみたいなんです!” 思えば秋ちゃんと春奈ちゃんのこの言葉がきっかけだった。新入生が入部したばかりの今、どうすれば早く部に馴染んでもらえるか彼女達なりに考えたのだろう。さすがは秋ちゃん、気が利くなあ。そして春奈ちゃんは人を乗せるのが上手い。遊園地なんていくつになっても楽しいところなんだから、そんなおいしい話まで出されたら行く気満々になっちゃうのは目に見えてるじゃないか。私だけじゃない。円堂くんも他のみんなも同じ気持ちだったようだ。 そんなこんなで私を含めたマネージャーを中心に計画、監督には保護者役として同伴してもらえることになり、夢のような1日はいよいよ明日に迫っていた。 「ちょうど明日、お店も休みだったんですよ!」 「それに母さんが身体弱いから、おれ、実は遊園地行くの初めてなんです!」 「母さんへのお土産なににしようかな。あ、乃々美ねえちゃんにも買わなくちゃ!」 ずっとこんな調子で話し続ける虎丸くんに私は母親のようなあたたかい視線を向ける。本当に楽しみなようだ。私だけでやった訳でもないしそもそもまだ出掛けてもいないのに“忙しい中頑張って計画してよかったなあ”なんてこの笑顔を見ているとちょっとした達成感も湧いてくる。 なんだかんだ言っても彼はまだ中学1年生、しかもつい最近まではランドセルを背負っていたのだ。出会ったのが他の1年生より早かったせいか改めて考えてみるとびっくりするし、すごく不思議な気持ちになる。だけどこの喜び方を見ているとああ、まだまだ幼いんだなあなんてちょっとした安心感も生まれて。…ふふっ、なんだか可愛いなあ。 私は自分でも気づかないうちについ虎丸くんの頭を撫でていた。さすがにこれは嫌だったかななんて思ったけれど、彼はさして気にしていなかった。むしろえへへと照れたように笑っていたことでさらに私の母性本能が擽られたというのは内緒だ。 「ねえ名前さん!」 「ん?」 「明日、一緒にジェットコースター乗りましょうね!」 「ふふっ、わかったわかった」 「絶対!約束ですよ!」 「はいはい」 そんなこと言ったって楽しみなのは私も一緒。こんなに次の日が待ち遠しいのはいつ以来だろう。 「明日晴れるといいですね!」「うん、何着ていこうかなー」 ああ、はやく明日にならないかなあ。 明日が笑顔いっぱいの素敵な1日になりますように。 天衣無縫 純真で無邪気なあの子。 天衣無縫 人柄が無邪気で、 何の飾りもないこと |