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それをじっと見つめていた薔嬌はホウと小さな溜め息を溢した。
少しからかうだけのつもりだったが、苛めすぎた様である。

いたいけ…かどうかは別として、十八の少年で遊ぶには度が過ぎたと少しだけ反省した。
仕方がないと身体を起こしながら口を開いた。


『はじめから上手い人なんていないわ
あなたがこれから御史として出世していく為にはこういう事が必要になる

十八のあなたに、その必要な力が養っていた方がわたくしは恐ろしいわ…

泣いている暇があったらわたくしから学びなさい
嘗て、あの人がそうした様に――』


あの人――それが気になって一寸顔を上げれば、目の前には薔嬌の顔があって、気が付けば口付けを交わしていた。
先程よりも幾分も優しいソレに、清雅は変な錯覚を覚える。


まるで彼女と愛し合っているのではないか、と――。


入り込まれた舌に釣られる様に舌を絡ませていけば、その想いは増す一方。
唇から伝う口液が口付けの激しさを物語り、それが一層清雅の身体を熱く粟立たせた。


『言葉で教えると雰囲気が台無しになってしまうから、出来るだけ実技で学んで
あなたら、出来るでしょう…?』


優しく諭されると、先程と同じ様に――けれど決定的に違う何かがある――彼女の乳房に手を伸ばして愛撫を始めた。
交わされる口付けが激しくなれば同じ様に、優しくなれば撫でる様に、と緩急をつけて揉み解していけば、少しだけ彼女の身体が熱くなった様にも思える。

これがコツなのかもしれない。

そう思った瞬間、今度は自分からゆっくりと薔嬌の身体を押し倒していった。
後はもう、本能のままに彼女を求めるだけだった。










甘い声が室内に響き渡る。
先程までは清雅のモノだけだったが、今では二人の声が合唱の様に響き合っている。

それは二人の男女が共に恋歌を紡ぐ様にも聴こえた。


『ッ…ん、あん、あ、はぁ…』


小さな、まさに鈴の鳴る様な小さな薔嬌の喘ぎ声ではあるが、しっかりと清雅の耳にも届き、甘い痺れとなって全身をくまなく駆け巡る。
噛み締める唇から零れる清雅の声も、同様に彼女の心を高ぶらせていく。

あれから二回、清雅は果てているが、薔嬌は未だだった。
せめて一度と決めた彼は、今もなお仕事で疲れ果てた身体に鞭打つ様に腰を打ち付けている。

ジンジンとした快感が痛いほどに腰に纏わりつき、快楽ゆえの涙が清雅の瞳をまとう。
灰色の瞳が揺れる様がなんとも美しくて、柄にもなく薔嬌は柔らかく微笑んだ。

そっと繊手を伸ばして頬を撫でると、子猫の様に清雅が摺り寄せてくる。
ツイと視線が外れ、下へと落ちていく。

落ちた先は薔嬌の豊満な乳房。
そしてその頂きにあるプクリと固い芯を持った紅い蕾。

真っ白な雪の肌に浮ぶソレを目に留めた瞬間、ゴクリと清雅の喉がなった。
なんとも淫靡で、妖艶で、目に焼きついて離れない、熟れた果実を思わせる蕾に、そっと口付ける。


『あんッ!…ッあ、やぁ…』


瞬間、薔嬌の喘ぎ声が大きくなった。

待っていた反応に、清雅は夢中になって蕾を食んでいく。
舌で転がして、舐めて、唇ではさんで、吸い上げて、歯を立てて。

そのつど甘い声で啼く薔嬌に、清雅は言い知れない満足感を得ていく。
ずっと啼かせたいと思って、ただそれだけの為に彼女の身体を求めた。


『あぁ、あ、んッ…あん、はァ…ッ!』


先程の余裕は一変して、薔嬌は引っ切り無しに甘い喘ぎ声を上げる。
腰をくねらせ、足を絡ませてもっと深くと強請る様は、今まで見てきたどの女たちよりも魅惑的で、淫靡で美しい。

薄っすらと滲む涙と、艶めく唇が清雅の背中にナニかを走らせる。


――口付けたい…


初めて自ら彼女の唇を求めた。
身体や性技を求めれど、唇を求めた事はなかった。

そっと重ねれば、言い知れないナニかが清雅を満たした。
口付けなど、今日だけでも数え切れないほど交わしているのに。

重ねるだけの口付けではあるが、それは清雅の心を確実に満たしていき、絶頂への階段を駆け上がる様に促した。


「ッ…ぅ、くッ…あ、ッ!」


快楽からくる涙を必死に我慢しながら、薔嬌を絶頂へ導こうと腰を振り続ける。

口付けを交わして、乳房を愛撫して。
彼女の身体を折り曲げるようにして腰を打ちつけ、奥にある柔らかな感触を求めて深く貪った瞬間、彼女の膣内(なか)が大きく(うごめ)く様に脈打ち、それに誘われる様に清雅は己の精を解き放った。

ブルリと震える身体に、今日一番の快楽を得たのだと清雅は確信した。
そして吐精する瞬間、彼はある言葉を呟いた。


“――薔嬌ッ…!”


初めて呟かれた彼女の名前。
それを聴いた瞬間の薔嬌の顔を見る事なく、清雅はゆっくりと彼女の身体に覆いかぶさる様に意識を手放した。

汗ばんだ身体、ツンと鼻を付く情事の香り。


余韻漂う室内に、薔嬌は驚きを隠せないままただ横たわっていた。




To be continue...


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