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むせ返る様な花の香りがした。
先程まで整然としていた室内は瞬く間に情事の匂いが蔓延し、清雅の思考力を鈍らせていく。


己を馬乗りに跨る女――薔嬌を見下ろしつつも、清雅は少女の様に甘い声を挙げて喘いでた。

“女を教える”と言ったそばから彼女は清雅を押し倒し、触れるだけの口付けから、弄り合う様な深い口付けで身体を高ぶらせ、気が付けば腰布も乱れた姿に剥かれていた。

一体どんな早業を使ったのか、と普段の彼ならば思うのだが、施された口付けと花の香りで彼は声を上げるだけだった。


「ッ…あ…んッ…ッあ!」


胸の小さな蕾を丹念に唇で食み、チクリと痛むソレは清雅の身体を粟立たせる。
始めはくすぐったくて仕方がなかったが、それはいつしか甘い疼きへと変わり、清雅の雄は首を上げていた。

それをゆっくりと掌で撫で上げれば、腰布がじんわりと湿り気を帯びていく。


(こんな……俺がッ)


必死に声を我慢しようと唇を噛み締めるが、漏れる声を抑える事は出来ない。
掌で口元を覆えども、快楽は惜しみなく清雅を襲う。



その様子を、薔嬌は特に何事もない様に見つめていた。

女を教えると言ったのはある意味、興味本位からだった。
清廉で潔癖なほど“色”に弱い少年の表情を歪めてみたかったから。

それに彼女の見立ててでは、彼の癇癪は性欲の抑止からくるものだと思った。
生来の気性もあるが、侍女たちからの話ではここ一、二年で癇癪騒動が始まったらしい。

特に己が来てからは拍車がかかった、とも――。


つまりは欲求不満の上に、己とい存在が彼の精神に影響を及ぼしたという事だ。
ならばその不満を解消させてやればよい、と思い立った。

己が男の“欲”を煽る存在である事を薔嬌は重々承知していたし、茶に含ませていた思考力を鈍らせる薬草で彼の理性が崩れればそう暴れる事もない。

事実、清雅は薔嬌の手業に、面白いほど素直に反応を示している。
男を育てるのも悪くない、彼女の心の片隅に残っていた母性が、そう囁いた。


『若様、喘ぐだけでは女の勉強は出来ませぬよ』


ニヤリと笑みを浮かべれば、清雅はカッと身体を粟立たせた。
その反応はまるで生娘の様に思えて、薔嬌は変な錯覚を覚えた。

己が男で清雅が女、生娘の様な清雅を己が辱めている、と――。


腰布に手を滑らせゆっくりと紐解いていけば、首を(もた)げた彼の性器が露となった。

あらまあ、と呟けば、恥かしそうに清雅が顔を紅く染める。
ツ、と茎の部分に指を這わせれば、ピクリと性器は反応を示し、ジンワリと亀頭に透明な雫が滲み出てきた。

それを見せ付ける様に清雅と視線を合わせながら舌を這わせていけば、また甘い声を上げていく。
ここまで声を上げる男も珍しい、と薔嬌は思った。

今度は亀頭にねじ込む様に舌を絡ませれば、ビクリと身体が大きく反応する。
これは面白い、とばかりに薔嬌は性器への愛撫を強く施していく。


「ッあ、ァ…ッ、ん…ッ」


声を抑えようと必死になるが、それすらもいじらしく初々しい。
目を細めて薔嬌は笑い、今度はパクリと咥内に飲み込んだ。

瞬間、清雅は叫ぶ様に声を上げた。
ねっとりと絡み付いてくる咥内と舌に、清雅は訳が分からないと大きく頭を振る。

女を抱いた事はあった。
それは妓女だったり、潜伏先の侍女だったりと様々ではあるが、経験はそれなりにあると自負をしていた。

この女に“それ程女を知らない”と言われたときは癇に障った。
けれど、怒る気もない程彼女に見惚れていたのか、何も言い返せなかった。

色香に惑わされ、気が付けば女の様に淫らに声を上げて喘いでいる。

今だって抵抗しようと試みているけれど、与えられる快楽に身体が痺れて上手く動けない。
頭が霞んで上手く言葉が紡げない。

何より、今まで抱いたどの女の中よりも彼女の咥内が心地よくて。


ジュルとイヤラしい水音を立てながら口淫を続ける。
見せ付ける様に視線を合わせてくる彼女は最後にジュルリと強く吸い上げ、そのまま精を吸い込まれるがの如く吐精した。

瞬間、薔嬌は口を離した。
ビュル、と音が出そうなほどの勢いで飛び散る白濁に、彼の欲求不満の度合いが分かる。

クスリ、と薔嬌は唇を舌で舐めながら笑う。
そして清雅の腹に飛び散った白濁を掌で撫でる様に掬い、それをまた目の前で視線を合わせながら舐め上げていく。


「…ッ!」


妓女ですらもしないその淫らな痴態に、清雅の性器はまたゆっくりと首を擡げていく。
同時に、一度吐精したからか妙に頭がすっきりした。


『流石はまだ十八、お元気ですこと』


煽りの言葉も、今なら身構える事なくすんなりと聞きいれられる。
(けしか)けているのだと悟れば、その誘いに乗ってやろうと清雅は身体を起こして、薔嬌の腕を強く引いて己の腕の中に納める。

驚くこともなく、彼女はツと口元を綻ばせた。


『さあ、今度は若様――清雅の番よ
わたくしがした様に、わたくしにしてみせて』







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