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(出来る事なら、貴妃とは会いしたくありませんでしたわ)
決意はしたものの、戸惑いは消える事はない。
当然だった。
彼女は愛の中で育った少女だ。
自分は相手から受け入れられるだろう、それを前提にして相手と接するだろう。
これまで逃げる様にして生きてきた婉蓉とは、生き方自体が対極の位置にある。
考え方からして、袂を重ねることは難しいだろう。
「婉蓉」
悶々と考え続ける婉蓉に痺れを切らしたのか、抱き寄せていた腕を更に強めて抱きしめる。
そっと首筋に口付ければ、婉蓉は甘い吐息をこぼし、男を惑わす娼婦の様に淫らな女へと変貌する。
『…ッき、様…あっ!』
自身の名を紡ぐ唇をふさぐように深く口付け、真っ白な身体を暴く為に乱暴に腰紐を解く。
深くなる口付けと共に、淫らな水音が二人の鼓膜を包み込む。
暴かれた肢体は、月光により白く、鮮明に艶やかに写る。
彼の視線を己の身体から離そうと、婉蓉はもっとと口付けを強請るように男の首に腕を回す。
それが仇となり、男の唇は首筋、胸元へ移り、次々と紅い華を咲かせる。
白い肌に咲くその華は男の支配欲を満たし、同時に雄の欲求を煽った。
(王よ、婉蓉を選ばずに貴妃を選んだこと、精々後悔するんだな…)
ニヤリと小さく口元を緩ませ、甘い快楽の海へと溺れていった。
ギシッ、ギシッ、ギシッ
寝台の軋む音が室に響き渡る。
悲鳴とも聞き取れるその音は、否応なしに二人の睦言の激しさを物語る。
「…ッ、婉蓉…」
『んッ…あ、あぁ、あん!』
男の声に応えるのは婉蓉の甘い吐息。
虚を掴む手を掴み、指を組み、肌を重ね、二人の髪も重なる。
余すところなどない程に、二人は溶け込む様に互いを求め合った。
『こ、き様・・・皇毅、様ッ・・・』
ギシ、ギシと寝台の軋む音に紛れながら、婉蓉の男の名を呼ぶ声が聞こえる。
それに応え様と、男はただ腰を振り続けた。
春の夜に響くのは、男女甘いの吐息。
相手に溺れるのはいったいどちらなのか、それを知る者は遠い空の向こう…。
…婉蓉…クッ…
…あッ…こ、き様…
To be continue...
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