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―――藍州、湖海城


「末弟からの文を読んだ?」

「うん、読んだよ」

「いい出逢いをした様だね」


同じ顔をした三人の青年が次々と口を開いた。
誰だとは誰も言わない。

藍州を統べる藍家当主、藍雪那たちである。


「邵可様のご息女だそうだよ」

「へえ、秀麗姫か……」

「たしか龍蓮と年も近かったよね?」

「うん、一つ下だって」

「黎深と姻戚になるのは気に入らないけど、龍蓮のお嫁さんにはピッタリだよね」


ムスっと表情を歪めながらも、一人はきっぱりと告げた。
その提案に、他の二人も納得とばかりに頷く。


「そうだね」

「朝廷に入れば、他の貴族たちも色々と画策してくるだろうし、王にあげるのも勿体ないしね」


ウンウン、と頷く三人。


「これは早々に手を打たないとね」

「お見合い状でも送るのかい?」

「まさか、そんなの黎深や名代殿に握りつぶされるのが落ちだよ」

「ということは――」


「「「直接だよね」」」


三人の声が見事揃った。
流石は三つ子である。

わたしが行く、と言ってはいるが、傍から見れば最早誰が行くのかさえ分からない。
誰が行こうとも同じではないだろうか?という情景である。


「私が行く」

「いいや、私が行くよ」

「だめ、私だよ」


結局この日、三人の言い合いに決着が付く事はなかった。





――その晩

一人の青年がそっと夜昊を見上げていた。
まるで天に昇る月に恋焦がれる様な表情で見上げる姿は、絵画の如く流麗で美しい。


「お姫様が恋しいかい?」


はっと青年は振り替えった。
そこには鏡に写したかの様に己とそっくりな青年―月―が佇んでいた。


「なんだ、月か……別に…ただ、星が綺麗だなと思ってね」

「ふ〜ん」


特に突っ込む事もなく、月と呼ばれた青年は隣に立つ。


「君が行きなよ」

「昼間の事かい?」

「うん」

「いいのかい?私が行けば――」


“――何か一騒動起こすかもよ?”


続けられた言葉に、月は一瞬おどけた様な表情を浮かべる。
次いで、ククク、と声を挙げて笑った。


「何が可笑しいんだい?」

「別に……可愛いなと思ってね」

「また子ども扱いしたね」


ムスッと表情を顰める青年に、自然と笑みが零れる。

三つ子の中で一番の末で、自分たちに、いや、自分に合わせ様といつも必死な(おとうと)






 

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