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しばらく互いを探り合う上辺だけの談笑を続ければ、側近二人の“覚悟”が定まってない事は直ぐにわかった。

そして、劉輝と紅貴妃を見つめる別の視線に気がつくと、流れるような優雅な所作で三人の前から辞し、その視線の主たちの先へと向かった。










『三師ともあろう方々がこの様な場所で覗き見とは…』

「婉蓉か」


現れた美貌の女官に、呆れた様な声で返事をする茶太保。
梅茶梅饅頭、剣術見学と唸り続ける霄大師、宋太傅は婉蓉がいる事に気付いていない様である。


「先程からこの調子じゃ、放っておいてくれて構わん」


劉輝と貴妃を対面させようと案を練っていた様だが、話が反れてしまった様である。
下らぬ言い合いを続ける二人の名誉官吏に、二人は大きく息を吐いた。


「おお、婉蓉か…」

『ご無沙汰しております、太傅』


そう言って拝礼を行う婉蓉をそのまま留めると、ポツリと苦言をもらした。


「あいつはまた、稽古をサボりおって…」


ここ最近、貴妃やら近衛から逃げ回っていた劉輝は剣の稽古をサボってた。
その事に指南役にも就いていないこの太傅は、暇で仕方がないらしい。


「そなたはどう思う?主上は“花”与えると思うか?」


太保の問に、婉蓉は間髪いれず否と首を振った。
先程話した様では、側近の二人は自身らが試されているという事にすら気付いていない。


『自覚も覚悟も足りませんわ
妾でしたら彼らを側近にすらしません』


正直な感想に、三師は満足そうに笑みを浮かべた。

そう、今のままでは使えない。
だからこそ、あの二人を側近に選んだ霄大師に婉蓉は不満を抱かずにはいられなかった。









『茶会は如何でございましたか?』


室へ戻ってみると、浮かない顔をした主人がボーっと佇んでいた。

それとなく声を掛けてみるが、返事は返ってこない。
よほど紅貴妃を気に入ったのか、表情はどこか笑みを帯びたものであった。


(まあ合格、と言った所でしょうか)


“妃”としてはダメダメでも、“人”としては最高の部類に入るだろう邵可の娘に、婉蓉はホッコリと人知れず笑みを溢した。

主人が気付いた時に、貴妃から渡された饅頭を食べられる様に茶を用意しておこう、思いつくままに静々と退室した。






 

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