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『劉輝様、劉輝様…
どちらにいらっしゃいますの?』


淡い薄紫の衣をなびかせながら、優雅に後宮の回廊を忙しく進む艶やかで美しい女人がいた。

しっとりとした漆黒の髪、橙がかった赤褐色の瞳、透き通る様な陶器の肌。
後宮の主に寄りそうに相応しいほどの、麗しい美貌の佳人。


その女人の姿を目に留めた他の女官達は、すぐに拝礼を行いその女人に礼を尽くす。

あれだけ忙しく動いているにも関わらず、一向に優雅さを失わない彼女に、若い女官達は尊敬と羨望の眼差しを送った。


「はぁ、いつ見ても麗しく優雅ですわ」


走り去っていった女人に、年若の女官がポツリと呟いた。
その声に、傍にいた年嵩の女官は当然と言わんばかりに悠然と微笑んでいた。


「当然でございます
あの方は、先王陛下にすら認められた天下第一の女人ですよ」


まるで我が事の様に語る年嵩の女官に、その場にいた年若の女官達は一層尊敬と羨望の眼差しを送った。

ホウ、と溜め息を着きながら、猶もその女人が去って行った方に視線を送り続ける女官達に、年嵩の女官はまたか、と胸中で溜め息をついた。


「あなた方、憧れるのはそれくらいにしてさっさと仕事に戻りなさい」


年嵩の女官の張りのある声に、ピクリと身体を強張らせると一目散に仕事場へと戻っていく。
やっと仕事に戻ったか、とばかりに大きく息を吐いた。


「全く、霄太師は何を考えておられるのでしょう
どのような女人が来ようとも、あの方に勝る筈がないというのに・・・」


近いうちに来る紅家の姫の事を思いながらポツリと呟くと、年嵩の女官も仕事へと戻っていった。






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