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黙り込んだ霄に、柳玉は再度千里眼を開こうと試みるが、それをまた彼は止めた。
このまま散らせるには惜しい巫女だと思ったから。
人間の為に、縹家の為に何かしようと思ったのは、初代の彼女を除いて初めての事だった。
長く生きれば不思議な事も起こるのだな、と霄は小さく笑みを溢した。
「私がする」
「え…?どういう――」
柳玉の言葉に答える事もなく、霄は天井を仰いだ。
次の瞬間、ゾワリと身震いするほどの巨大な力の片鱗を彼女は感じ取った。
すぐさま逃げ出したいほどのそれに、ガタガタと身体が震え出す。
カチカチと恐怖に奥歯が鳴る。
一瞬の出来事だったのに、混沌とした闇の中に突き落とされた様な感覚だった。
「まずいな……」
眉根を寄せながら告げられた言葉に、彩月の危機をまざまざと感じ取れる。
雄掠は何故分かる、と言いたげな表情だったが、その問いも一瞬だった。
「場所は――」
続けられた言葉に雄掠は一言、禁軍を出動させろ、と霄に命じると、紫衣を翻して室を飛び出た。
それに続くように柳玉も後を追う。
ヤレヤレと表情を崩しつつも、王の言葉に従う様に禁軍の出陣要請をする為、鍛錬場へと向かった。
「こりゃまた随分な美人だな」
「ああ、こんないい女見たことがねえよ」
下卑た視線と言葉に、彩月は意識を取り戻した。
薄暗い場所と数人の男たちに囲まれた現在の状況に、己が囚われたのだと悟った。
首筋に走る痛みから影の仕業なのだと思っていたが、そういった自分は見当たらず、気配も感じ取れない。
「目が覚めたようだな」
ニヤニヤと下品極まりない笑みを浮かべる男に、心底嫌そうな表情浮かべる。
返事をしない彼女に、一寸男たちに表情が苛立つ。
だが、次の瞬間にはだらしなく顔を緩めた。
『黒幕はどなたか、教えてくださるかしら?』
いつになく艶っぽい表情で告げる彼女に、普段の彩月を知らない男たちは、嬉しそうに笑みを深めた。
下手に出ているのを勘違いしたのだろうと容易に想像できる。
「さあな」
答える気は更々ないらしい。
その代わりと言わんばかりに、己の身体に巻かれた荒縄が乱暴に解かれていく。
息苦しさからの解放に、ホッと安堵の息を溢すが、事はそれだけで済みそうにはない。
解かれた腕を、二人の男がそれぞれ床に縫い付ける様にして押さえ込む。
彩月の表情が一瞬にして変わった。
『何をするッ!』
何をする等と問うが、頭の中では理解していた。
身体もそれに順ずる様に抵抗する。
「こんな状況じゃあ…一つしかねえだろう?」
ヘヘッと下卑た笑い声が、嫌に大きく聞こえる。
決定打だった。
何をされるかなど、分かっていた。
これまでにも幾度も合った状況に、彩月の体はビクリと反応した。
荒々しく纏う衣が引き裂かれ、重ねも破かれ、下着すらも男は荒々しく引き裂き、彼女の身体を暴いていく。
その間、彩月は身体をカタカタと震わせるだけ。
(駄目…駄目よ、止めて!
私は巫女なのよ?
身体を暴かれれれば、もう巫女ではいられない
瑠花様に御仕え出来ない…!
やっと見つけた居場所なのよッ)
抵抗も儘鳴らない状況に、ただ静かに、彼女は助けを請う。
(誰かッ、誰か助けて!)
To be continue..
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