紅姫ネタ

2010/12/15 00:29



“わたしは紅家に残ります

父上と母上は秀麗と共に貴陽へ

未来の紅家は、わたくしが継ぎます”











「玉麗、秀麗が貴妃として入内する事となった」


紅州紅家本邸の庭園傍で叔父から告げられた言葉に、玉麗は事もなくそうと端的に返事を返した。

自分の片割れが貴陽でどんな生活をしていて、そして依頼された仕事内容を考えれば当然といえば当然だった。

特にこれといって何かを感じたりはしない。
ただ、彼女の危機管理能力の低さや後宮に対する知識の欠落具合に溜め息が零れた。

最後にあったのは“母の躯”の前。
知らせを聞いて駆けつけたその時、久方ぶりに秀麗と再開した玉麗は、やはり自分が残って正解だと確信した。

彼女は真っ直ぐすぎた。
紅家という鎖に繋がれるには、貴族として生きるにはあまりにも無垢だったのだ。

そして、父の養育方法がそれに拍車を掛けたのだ。


(父上も存外に役に立たぬな)


隠してはいるが紅家一の切れ者である父・邵可に、心中で忌々しげに毒づいた。
それは母の死後、ただ一人となった元公子の家人も同様である。


(静蘭もただ秀麗を甘やかすだけのようね)


男は危険な存在で、たとえ市井に身を置こうとも紅家の姫としての誇りを違える等許されるはずもない。
もっとも、そういった事は父である邵可が教えなければならない事ではあるが。

だが、彼女にはそれ以上に気がかりな事があった。
何の為に己が父と母の傍を離れたか。

未だ国内に染み付いた下らぬ迷信に、紅家が揺れぬ様にと藍家とは別の方法を取ったというのに。


「秀麗が紅家直系長姫となるのね…」


次代の紅家を担う為、父と母の傍を離れ、紅家の姫は双子ではなく年子であると信憑性を増す為。
何より、紅家直系長姫が市井に身を置くなどとあってはならない。

誇り高い筆頭名門たる紅家の直系長姫は、それに相応しい存在でなければならない。
そう、“貴族”でなければならない。


次代の紅家当主となる己が、直系長姫でなくなる。
それが許せなかった。

己の片割れが犯した短絡な所業に、玉麗は怒りを覚えずにはいられなかった。


(紅家の名を地に落とすつもりか、あの莫迦めッ!!)


同時に思うのは、己が婿にと望む青年の事。
彼を紅家に迎えるのは彼女と叔父・玖琅の悲願でもあった。

その彼に秀麗が逢うのだと思うと笑みが零れた。


(まあ、好印象を抱かせてわたくしと会うまで女人慣れしてくれればいいのだけど…)


王の教育よりも、そちらの方に期待が篭った。



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