紅姫ネタ4

2011/02/24 23:39



『御機嫌よう、黎深叔父上』


ニッコリと花も恥らう笑みを浮かべる玉麗に、黎深の表情は普段の冷徹な面持ちは一縷も見当たらず、デレデレと緩みきっている。


「ひ、久しぶりだね、玉麗
逢わないうちに、随分と、き、綺麗になったね」


しどろもどろに告げる叔父に、玉麗は可笑しそうにクスクスと哂う。
袂で口元を隠すその所作は、まさに優雅と称すべきもので、その容姿も相俟って亡き義姉を髣髴とさせた。

きっと兄も、彼女に妻を見出したのだろうと直感した。


「秀麗にはもう会ったんだろう?」


久しぶりの再会はどうだった、と続けて問えば、クシャリと彼女は苦笑を浮かべた。


『育った環境が違えば、血を分けた姉妹もこうも考え方が異なるのですね…』


そっと表情に影が落ちる。

後宮入りについて、何故と秀麗に問うた時の答えを思い出したのだ。
王に告げたい事がある、と真っ直ぐに己を見据えて告げた彼女は確かに間違ってはいない。

間違ってはいないけれど――己の身の危険を彼女は考えなかったのだろうか、と思わずにはいられなかった。


十人並みの容姿だから自分は大丈夫だとでも思っているのか。
それとも、ただ単にそういった思考が働かないのか。


はたまた、男が皆容貌の美しい女ばかり愛するとでも思っているのか。


どちらにせよ、秀麗の浅はかな行動には少しばかり――いや、かなり立腹していた。
久しぶりの再会でそれを告げるのは避けたが、出来れば近い内にまた会って告げたいと考えている。


「君が望むのなら、貴陽で暮らしてもいいんだよ?」


紅家の為と僅か三つだった彼女は、自ら紅家に残った。
重い家名を継ぐ子供のいない紅家を思って――。



『叔父上方が大変でしょう、わたくしは平気ですわ』


ニッコリと微笑む姿はいつもの彼女で、冷めた瞳が意志の強さを物語っている。

ただ――と続けた言葉に、黎深の眉間に皺が刻まれた。


『秀麗が大事に育てられたのだと思うと――嫉妬してしまうの
嫌だわ、たった一人の姉妹なのに…』


寂しそうにそう語る彼女を、黎深は不意に抱き寄せた。
今にも泣きそうな表情で告げる玉麗に、黎深はせめてこの貴陽にいる間だけでも家族で過ごせれる様に己が動こう、と決意した。



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