紅姫ネタ3

2011/01/18 23:41



「秀麗、君に会いたいと来ている人がいるんだけど…」


オズオズと尋ねる父に秀麗はいいわよと答えた後、誰だろうと首を傾げた。
その姿に、玉麗と重なり、やはり姉妹なのだと納得した。

たとえ離れ離れになろうとも、二人は血の繋がった正真正銘の姉妹なのだと。


「玉麗…君の姉妹だよ
覚えてないかな?」


あえて双子の、とは言わなかった。
いや、言えなかった。

二人は――特に玉麗に関しては、紅家の秘蔵中の秘蔵として極秘にされているのだ。
その本人が自覚しているにも拘らず後宮に来るのは些か困った事ではあるが、今回に関しては紅本家も目を瞑ってくれたらしい。


「玉麗!本当に?
本当に玉麗が来てるのね!」


気色をあらわにして秀麗は飛び付いてきた。
以前あった時はゆっくり話す暇もなかった姉妹との再会に、秀麗は胸を躍らせながら貴妃としての自室へと戻っていった。

何も知らずに――。











『失礼いたしまする』


その言葉の後に続いて跪拝しながら一人の女人が入室してきた。
頭を垂れている為顔は伺えないが、滲み出る気品が大貴族の姫として育ったのだと秀麗は思った。

羨ましいと思ったけれど、その分自分は貧しくとも父と母と過ごせ、静蘭とも出会えた。
彼女が王の様に紅本家で寂しく過ごしていなかったか、それだけが気がかりだった。


「顔を上げて、玉麗」


震える声で、秀麗は言った。 
その言葉を合図に、目の前の女人がゆっくりと顔を上げる。

人払いのされている貴妃の室内で、ようやく紅家直系姉妹が十年ぶりに再会を果たす瞬間だった。





秀麗は瞠目した。
目の前に佇む女人の顔に――。


記憶の彼方にある、母に生き写しの姉妹。

流れる漆黒の髪、透き通る様な雪の肌、煙る様な睫毛。

全てにおいて完璧なまでに美しい、記憶の中の母と同じ顔だった。
ただ一つ、母と異なるとするならば――瞳。

雷光の如きと謳われた母の瞳とは違い、玉麗の瞳は静かで冷たい、氷の様な美しさがあった。
己とも、父とも似ていない。

その静けさが、秀麗の心に小さな痛みを落とした。
似ていない事が、秀麗に後悔の念を落とした。


もし己が紅本家に残っていれば、彼女の瞳がこれ程までに静かで冷たいものになる事はなかったのでは、と。
そんな事を思ったとしても仕方がなく、何より彼女のこれまでを否定する侮辱の言葉だと分かっていた秀麗は、そっと瞳を閉じた。


『紅貴妃様におかれましてはご機嫌麗しく、恐悦至極にござりまする』


艶冶な微笑を携えて告げる姉妹に、秀麗はホウと簡単の溜め息を溢した。
同じ両親から生まれたというのにここまで違うのかと、少しだけ哀しくもなる。

けれど、続いて告げられた言葉に、そんな感情は吹き飛んだ。


『久しぶりね、秀麗
元気だったかしら?』


にっこりと歳相応に微笑む姉妹に、秀麗はパアと表情を明るくさせた。
ええ、そうね、玉麗のほうこそ元気だった、と十年ぶりの再会に花を咲かせた。



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