妓女ネタ1

2010/12/03 22:58



「これは、紫郎(紫家の若様)様」


廊(くるわ)の店主は、滅多に来ない上客の来店に驚いた。
仕事の付き合いで来る事はあっても、一人で来た事など一度もない。

だが、紫家の人間である彼の登廊となれば、今日の売上が伸びる。
愛想よく笑みを振り撒きつつも、頭に浮かぶのはどの妓女を付かせるかだった。




回廊を突き進み、店の最奥にある個室に向かう途中、雄掠の耳に琵琶と歌声が届いた。
そうそう聞けない琵琶と、不思議な調べの歌声。


店主に問えば、新しく迎えた妓女だった。

だが、歳が歳なだけに中々上客が付かない為、こうして禿に楽を教えているらしい。
かなりの美人らしく、現お職よりも美貌は上、と店主は称賛した。

上臈妓女よりもという美貌への興味より、あの琵琶と歌声の方が気になった。
他の妓女も付ける事もなく、早々と奥部屋にて彼女を待った。





「お前があの琵琶と歌声の妓女か…」


頭を下げたままの彼女の前に膝をつき、指で顔を掬い上げて雄掠は狼狽した。



「…美しい……」


掠れた声で囁かれた言葉は彼女の美貌だけではなく、彼女の瞳にも向けられた。
初めて目にした、絶世の美貌と澄んだ雷光の如き瞳に雄掠は時も忘れて魅入った。


「名は、何と言う?」

『玉蘭、と……』


他の女人よりも幾分低い掠れた声に、ゾワリと雄掠の身体に熱が走った。


「玉蘭か……気に入った
私はお前と契りを交わそう」


人をやって、三々九度を早々と済ませ、気がつけば玉蘭は寝台の上に押し倒されている。

先程まで琵琶を弾いていた。
その琵琶は、支えをなくして床に転がっている。










『あっ、あん!はぁっ、あぁ…』

「お前は、本当に美しい……」


落ちる口づけ、優しい愛撫。
激しいくも甘やかな情事の最中、彼は何度もそう言った。

快楽から逃れようとする玉蘭を押さえ込み、耳に被り付き、それでも囁く。


「お前は美しい……」



何が美しい、だ。
このようにいやらしく乱れる女のどこが美しいものか。

快楽に、白く霞む脳裏で玉蘭は苦言を漏らした。
それでも、最後は彼に縋り付いてしまった。

今までのどの男よりも優しいも激しく抱いてくれたこの男に、彼女もまた堕ちてしまった。



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