(ガリナナ)


「今回の獲物は大きい、各自今一度、計画を確認しておくように。」


凛として澄んだ、彼の声が夜のルベリアに響く。

嗚呼、やはり安心する。

どうしてだろうか、どうにも彼の声が自分の耳から離れないような、そんな気がして自分は耳を塞いだ。



「……っ、」


なんちゅー、夢や。

汗で張り付いた髪の毛をうっとおしく思いながらかきあげる。

あいつと戦ってから、こんな夢を見ることが多くなった。


(あかん、自分はルベリアの仇をとるんや。)


あんな奴に縛られている場合じゃない。

今日はもう眠れないと判断した自分は、盗賊の特技を生かしてベッドから抜け出し、夜風を浴びようと部屋を出た。


(あぁ、なんであんな夢見るんや。)


わしゃわしゃと頭を掻く。

大きく丸い、銀色の月が自分を嘲笑うようでどうもいけない。


「昔、二人で見た月も同じような満月だったな。」


声がした。

驚いてテラスの向こう側を見れば、ひとつ人影。


「…おどれ、何しに来たんじゃい」


凄みを効かせて低く、そう言ってやればそれはさぞ楽しそうに奴は笑った。

くつくつ。

月が自分を嘲笑っているようで。


「そろそろ、恋しくなる頃じゃないかと思ってね。」

「何を言うとん、」


気が付けば、奴の人影は屋根に無く静かに自分の後ろに回られた事に気が付く。

腐ってもチェスのナイト級というわけだ。


「私のことが、」


耳元でそう言われれば、またフラッシュバック。

嗚呼、この感情はこいつに作られたものなのだろうか、それとも、


「…っ」


反撃しようと魔力を練り込めば、彼の腕が予想以上に優しく自分を抱きしめてきた。


「なにすんね、」

「……会いたかった。」


いつものような、好戦的な彼の話し方ではなく、それはまるで、昔の様な感情をあらわにした声色で、自分も錯覚してしまう。


(嗚呼、だめだ。)


墜ちる。


「が、りあ…」


愛しく想う気持ちがからから回って気が付けばそれは深い憎しみに変わってしまう。

ほら、彼の抱きしめる腕があまりにも優しく暖かいから、自分はこうも簡単に崩されてしまった。

静かに、誰にも気付かれないように。
ゆったりと優しく、彼に向き直り抱きしめ返した。


銀に輝くその月だけが、その二人の姿を見ていた。







夫婦ふぉぉぉぉぉお!やだもうナナシさん随分旦那さん好きですねそんなあなたがSUKI////夫婦かわいすぎてはきそう
難題押しつけちゃってごめんなさい、向日葵さん(´;ω;`)こんな素敵な夫婦をありがとうございます!

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