(ペタとアルヴィス)
クロスガードに幼い子供がいるというのは、一度目の対戦の際に聞いていた。
クロスガードは、本当に意味がわからないと思った。
そんな、戦力にならない者を連れて何になるというのか。
だが、私の慕った彼もその少年に何故か惹かれていたのだ。
何故?
対戦の最中、ファントムはその少年に出会った。
そして少年は、ファントムからあの洗礼を受けたのだ。
選ばれたものだけが受けることのできる、美しい不死の呪縛。
嗚呼、その時からか、私もどこか彼に興味を抱いてしまっていたのだろう。
ダンナを失い、少年はとても落ち込んでいる様に見えた。
修行をしに来ているという滝壺に行けば、案外彼もいて、いつも一緒にいる、妖精がいなくなるのを見計らって彼に声をかける。
「こんにちは。」
「…!?」
湖の辺でまどろんでいたらしい彼に声を掛ければとても驚いた様子でこちらに振り向いた。
「…こんにち、わ」
少し、警戒しているようだったが、そこまで拒絶された訳ではないから大丈夫だろう。
歩み寄り、彼の隣に腰掛けても良いかと尋ねれば控え目に頷きが見えたので、ゆっくりと座る。
「君はどうしてこんなところに…?」
「貴方は?」
彼が少し不安そうな表情を浮かべたのが何ともいえなかった。彼がこんな表情をするなんてことは、私は初めて知ったから。
「私はただの旅人さ。
君みたいな小さな子がこんなところに一人でいるから気になってね。」
「…。」
大きな蒼い瞳が私を突き刺しなんだか居心地が悪かった。
彼は少しだけ間を置いてから、小さな声で話し出した。
「俺は、…修行をしてたんです。」
「それは凄い。
けど、そんなことどうして…?」
「この前の対戦で、ダンナさんがやられた。ファントムを倒すには、もっともっと強くならなくちゃいけない。」
何処か遠くを見つめた彼はそのあとに思い出したように、あ、俺見えないかもしれないけどクロスガードなんです。と言葉を続けた。
「…私も、先の対戦で大切なひとを亡くしてね。」
「…あ、」
彼は何ともいえない表情を浮かべて、私をじっと見つめた。
私は彼から視線を外して、静かに言葉を続けた。
「けれど、私は彼のためにもやらなくてはいけないことがあってね。」
まだまだ休んではいられないよ。
そう言えば、蒼い彼は何かを言葉にしようとしたのだろう。口をぱくぱくとさせてから、ぐっと一文字に結んだ。
「…ぁ」
「アルゥ〜!果物見つかったよぉ!」
彼が何かを言おうとした瞬間に、あの妖精のキラキラとした声が聞こえてきた。
ああ、もう終わりか。
そう思って私は歩き出した。彼にこれ以上深入りする訳にはいかない。彼の口から放たれる筈だったその言葉を聞いてしまえば、私は何か余計な感情を抱いてしまうかもしれない、と直感的に思ってしまったから。
「ベル、ありがとう。
あれ…?」
「どうしたの?」
「……いや、何でもないや。」
少年の蒼い瞳の強さを、私は忘れる事ができなくなってしまったではないか。
(ああ、全く。貴方はなんてことをしてくれたんですか、ファントム。)
自然に漏れ出す笑いに、私は久しぶりにファントムを近くに感じる事が出来た気がした。
シンクロニシティだか何だかを感じた挙げ句「私とファントムは同じなのさ」とまで言い放ったペタさんとファントム?ヤダヤダ(笑)のアルちゃんとのお話…!こんにちはと笑顔で話しかけるペタさん受信してつらくなりましたありがとうございました。
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