(ドロアル)


私は、幼い頃からお姉ちゃんに憧れていた。

素敵なおようふく

素敵なぬいぐるみ

お姉ちゃんの作る料理は最高だったし、

なにより、お姉ちゃんと一緒に居られることが幼い私にとっては、とても嬉しいことだったんだと、今になると思う。

お姉ちゃんみたいになりたくて、お姉ちゃんから服を貰ったり、お姉ちゃんに人形を作って貰ったりだってした。

私のなりたい女性像は、お姉ちゃんによって作られてきたのだと思う。


だから、



「アル、とりあえずそこ座りなさいよ。」

「あぁ、ありがとう。」


かたん、

控え目に音を鳴らした椅子に微笑んで、私は彼の顔を見た。

(本当に綺麗な顔してる。)

白くきめ細かい肌に、整った輪郭。
薄く色付いた唇に、蒼く澄んだ瞳は、まっすぐ未来を見据えているのだろう。

彼は滅多に表情を崩さずに何処までも客観的に自らを見ていると思っている。

私よりも年下な彼が、どうしてこんな表情をしなければならないのか、私はずっと疑問だった。

純粋に彼のことをもっと知りたいと思ったのだ。
アルヴィスは滅多に自分のことを話さないから、私から自室に彼を誘った。

お茶を一緒に飲むくらいいいじゃない、ってね。


「アルヴィスってコーヒー飲めるっけ?」

「…あ、」


少し苦い顔をした彼に、私は可笑しくなって柔らかく微笑む。


「あら、飲めないの?意外とお子様なのね。」

「仕方ないだろ、」


少しだけ眉間にしわを寄せて嫌そうに私を見る彼に楽しくなってしまう。

年相応な彼の一面を見付けて嬉しくなる。

そういえば私も、コーヒーを飲める様になったのはお姉ちゃんの影響だったっけ。

黒く苦い、その液体を事もなげに体内に収めるその姿に憧れていた。


「まぁ、たまには大人のフリするのもいいんじゃない?」

「…?」


不思議そうな顔をした彼を尻目にコーヒーを白いカップに注ぐ。

もちろん、二人分。


「まずは、カフェラテくらい甘くしてから。」

「…飲めない、と言っただろう。」


ミルクをたっぷりと、お砂糖も5つ。

これだけ甘くすれば、彼だって飲めるでしょう。
私もここから始めたから。


「アルヴィスには、今の私はどんな風に見えてるのかしらね。」


甘い茶色を、まじまじと覗き込んでいる蒼色に私は語り掛ける。

お姉さん?

魔女?

復讐者?

まさか、お姫様とか。

それは無いか。


「…俺にコーヒーを飲まそうとしてくるくらいだからな。」


可愛くない、憎まれ口を叩いてから彼はその液体に口を付けた。

一口飲んでから、少し驚いたような表情をして、その後彼は何故か、柔らかく微笑んだ。


「ドロシーはドロシーだろ、それ以上でも以下でもない。」


ふわりと、彼の瞳に暖かな何かが映ったような気がした。

(あの時の、お姉ちゃんみたいな。)


「そっか、そうだよね。」


ふふ、と笑いを漏らしてブラックのコーヒーを飲めば、独特の苦みと少しの酸味を感じた。


(やっぱり苦いや。)






向日葵さんのドロアル強奪ぅ!
コーヒー飲めないアルちゃん可愛くてもうなんのなんの



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