(アシュペタ)


「あれ、もう起きるの?」


起こさないように、気をつけたというのにこう言う時に限ってしっかりと私の動向を伺っている彼に自然とため息が漏れた。

ふざけた奴だ。

私が寝床から降りると、目ざとくそう言ってくる彼に私は皮肉めいた笑いを漏らす。


「当たり前だ。私はお前の様に暇ではないからな。」


床に落ちていた、黒衣に袖を通す。

朝は嫌いだ。

全てを浮き彫りにしてしまう。


「そう、ザーンネン。」


楽しそうに舌を出した奴に、一発見舞おうかと思ったが止める。

ただでさえ、こいつのせいで喉やら腰やらが痛いと言うのに、これ以上奴に構ってやる時間と体力は生憎持ち合わせていない。


「ペタさん、」

「なんだ。」


面倒臭い奴だ。

もう行くと言っているのにも関わらず私を呼び止める彼に、歩を緩める。


初めは、ただ純粋に面白いと思った。


(ねぇ、ペタ。俺に抱かれてみない?)


あれだけ子供が好きだの、この世界を平和にしたいだの、

そんな腑抜けたことばかり言っていた奴が、一瞬だけ見せた、狂気じみた感覚に単純に興味が湧いたのだ。

私の知的好奇心には全くもって頭が下がる。

まぁ、ただ単に男ばかりのこの組織での性欲処理がしたかっただけなのかもしれないが。


ぐん、

意外と強い力で引っ張られ、ベッドで寝そべる彼の方へ倒れる。

(…スピリットパーツ。)

くだらない事にARMを使うなと思うが、そのまま彼の腕の中に抱き寄せられてしまえば、文句を言う気力もおきない。


「もう行くと言った筈だが…?」


後ろにあるアッシュの顔に向かってそう言ってやれば、楽しそうに笑った雰囲気がしてから、彼の腕の力が少しだけ強まった。


「いいじゃない、たまには。」


にこにこと楽しそうに笑う奴の顔が浮かぶ。

とことん自由な男だ。


「ペタの今日の仕事はなに?」


彼の問いに応えずにいれば、少しだけ不安が入り混じった声色で彼は続ける。


「また、危ない仕事…?」

「さぁ、どうだか。」


不敵に笑って彼の腕からすり抜ければ、不服そうなブーイングが聞こえたが無視をした。


「ペタさん」

「……?」


彼の余りにも優しい、慈悲の篭った私の名前に、何も言わずにただ振り返れば彼はまた楽しそうに笑ってこう言った。


「まぁ、なんかあったらまた抱いてあげるよ。」


にやりと微笑むその仮面の下の狂気を、私は心から愉しむのだ。

嗚呼、堪らない。


「ふ、覚えておこう。」


部屋から出れば朝の光が私を照らす。

眩しさに目を細めて、自分が、今なんだか、新しい玩具を与えられた子供のように、愉快な気分になっている事実に驚いた。

嗚呼、だから朝は嫌いだ。

全てを浮き彫りにしてしまうから。





やだもう参謀さん…///SUKI///
素晴らしいアシュペタ強奪してまいりました〜うふふ(*/ω\*)
向日葵さんありがとうございます!

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