(ファンペタ)


「ファントムっ!」


今日もレスターヴァに、参謀の叫び声が響き渡る。

(ああ、もう本当にうちのリーダーはどうしてこんなにも仕事をしないのだろうか。デスクワークは僕の管轄じゃないもん、とか可愛く言ったって私には通用しないんですからね。色々と雑務も片付けて貰わないと困るんですけど、本当に、今日はまたどこに行ったんだか、アンダータとか便利なモノを奴に持たせておいたのが間違いだっただろうか、私があれを管理すればいいんだろうか。あ、そういえばさっきキメラもファントムを探していたような。あれ、そういえばガリアンの姿が見えないな、まさか、もしかして二人でまたメルの奴らの所へ…っ!)

そこまで考えて、彼は視界の端に銀色がキラキラと光っているのを見つけた。


「…ッ!」


ファントムと大声を出しそうになってペタはそれを喉の奥で押し止めた。

そこはレスターヴァ城の中庭で、よく整備された大きな木の下、暖かい日の光の中で眠っている彼の姿があった。


「…ファントム、」


ゆっくりと近付いて行って、彼に静かに声を掛けた。

なんだか、起きそうにない雰囲気で、こんな気の抜けた彼の顔を見るのもペタは久しぶりであったから、少し、このまま起こさなくてもいいかなという気になった。


「全く、貴方は…。」


仕事を残したまま、こんなところでサボるなんて。

いつもは、引っ張ってでも連れていくけれど、今日のペタは疲れていたのでしょう、

彼の安心しきった表情を見ると、何故かペタも頬が緩んだ気がした。

ゆったりとした動作でファントムの隣に腰掛けたペタの鼻腔を、柔らかい草木の匂いが掠めた。

いつもならば、こんな匂いは虫酸が走るのだが、今日はなんだか、そんな気持ちにはならなかった。

彼の銀の髪が風に揺れる。
ふわふわ、そよそよ。


(なんだか、とても綺麗だな。)


静かに、音を立てないように、ファントムの髪に手を伸ばす。

意外にさらさらとしていて、流れるような髪の毛に心地良さを感じる。


(嗚呼、私もなんだか眠くなってきてしまった。)


そう思えば、自然と瞼が重くなる。

今日くらい、いいか。

そう頭の中で呟いて、チェスの作戦参謀は緩やかな眠気に身を任せた。















「あれ、目醒めた?ペタ。」

「…!?」


次にペタが目覚めた時には、何故かファントムが彼の顔を覗き込んでいて、その隣にロランとキャンディスが、ペタの隣にはキメラが眠っていた。

なんだ、この状況は。


「あはは、僕たちが寝てたから、皆も一緒に眠っちゃったみたいだよ。」

「…そう、ですか。」


大方、ペタやファントムを探しに来た彼らも、二人が余りにも気持ちよさそうに眠っているから、隣で寝てしまったのだろう。

ペタは、何故か不意に笑みが漏れた。
嗚呼、そうだな、こんな日もたまには悪くない。

そう、心のなかで呟けば、隣でファントム
が笑った気がした。







向日葵さんより強奪してまいりましたファンペタです!もう…ワタシシアワセネ…
ガリアンがいない!にこんなに悶えた人類(?)は私が初めてだと思います。
向日葵さんありがとうございます!



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