(MarionetteFantasiaから 盗賊s)




十二時の鐘が聞こえる。
今まで鳴ることのなかっ
たはずの時計から鐘の音
が響いた。



ギシ、ギシ、
足音が響く。



誰もいないはずの、森の
中の古びた洋館。



彼は、その壁に、その冷
たい壁に、そっと頬を寄
せる。



ギシ、ギシ、
足音が響く。



人が、自分の他にもいる
。それを悟った彼は、足
音の聞こえる、時計のあ
る部屋へ足を進めた。







あの時の







あの時の







あの人かもしれない







あの人って?







右腕が痛い







手には漆黒の剣。彼は歩
みを止めない。誰かはわ
からない。ドアを、叩い
た。



コンコン、と軽く重たい
音が空気を震わせる。

















ああ、誰かが泣いている。

















「イヴェール」



「ん?」



名を呼べば、優しげな笑
顔が向けられる。



手を伸ばし、その頬に
触れた。



「なんでもね」



「え?…はは、変なロー
ランサン」



確かに今、彼の目の前に
は、彼の愛しい人の笑顔
がある。確かに、ある。


















「まるで人形劇」








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テーマ「人外ファンタジー」
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