手を伸ばして彼に触れようとしたら、ふわふわとした銀髪が揺れた。触るな、と拒絶されたのだと思った。


「触る、な、」


案の定彼はそう枯れた声で言う。構わずに僕は俯いて表情を隠す銀髪を無理矢理退ける。頬を伝ったのは涙の滴だと思った。


「泣いているのか」


「泣いて」


「涙」


「泣いて…ない」


ぺた、と手のひらで頬に触って初めて驚いた顔をした。自らの手のひらが湿ったことに驚いたらしい。それに気付かなかった哀れな彼の頬を取る。


「なんで泣く?」


「しらない」


「かなしいのか?」


「…しらない」


何故そんな枯れた声をしているのか聞きたかったが止めた。指先が唇に触れると彼は怯えた表情を見せる。


「…僕は君に何もしない」


「わかってる」


「君を痛め付けたりなんてしようとは思わないさ」


「わかってるから…」


わかってるから、何?
大変残念なことに、悲しみはなかなか癒えない。傷はなかなか癒えない。しかし、いつか必ず癒える。どちらも。ひとりでに癒えることもある。もし君にそれがないのなら、僕が力を貸してやっても構わない。
だから泣くな。僕の大切な、相方。







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